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日々の便り

 

BUTTER CORN LADY再び

昨晩から、東京は雨。湿度は80%を超え、これ以上ないくらいにジメジメしています。こんな日は、さすがに私も遠出をしたいとは思えませんね。という訳で、今朝は早くからコーヒーを淹れ、久々に、本当に久々にレコードを引っ張り出して、朝から優雅な休日ごっこをしています。

昨年後半からだいぶ忙しく、レコードを聴くのも恐らく半年ぶり以上になるのではないかと思いますが、しかし、やはりレコードは良いものです。久々にアンプの接続を切り替え、ターンテーブルを起動し、ドキドキしながら恐る恐る針を落として・・・そして飛び出した鮮烈な音に、のっけからすっかり魅了されてしまいました。

「音質」を数値で語るなら、アナログレコードはハイレゾの足下にも及びません。そもそもダイナミックレンジが違うし、分解能が違うし、何より再生の段階での物理的な劣化が一切ない。レコードの音はダイナミックレンジは狭いし、混濁しているし、ターンテーブルの速度は物理的に揺らぐので、音程もテンポも不確かです。でも、なのに。この「ハッキリ」聞こえる音は、ぶわりと伝わるこの熱量のようなものは、一体何なのでしょうね。

気が遠くなる程高価なオーディオセットを理想的なスタジオに置いて、最高の再生装置でデジタル音源を再生すれば、きっとこんなチープな環境で、半ば自作品と化したオーディオで再生したアナログ音源など圧倒出来る音になるのでしょうけれど、そんな比較に意味はありません。レコードの凄いところは、今この環境で圧倒される音を出してくれるということ、その一点に尽きます。

ところで、実は昨年フォノイコライザを導入しまして、アナログ環境がかなり向上しました。その結果、これまで「耳が痛い」と感じていたレコードを聴いても耳が痛くなる事がなくなったのみならず、これまで音が悪いと思っていたレコードが軒並み「高音質」に化けてしまったのです。これは本当に驚きました。そんな訳で、以来頻繁に聴いている盤があるのですが・・・それがこちら、アートブレイキーの「Butter Corn Lady」です。

LINK
タイトル  :BUTTERCORN LADY
アーティスト:Art Blakey & New Jazz Messengers

ペラッペラのいかにも音質に期待出来なそうなビニールで、まぁ音質は良いとはいえないのですが、しかし。何度聴いてもこれが良いのですよね。具体的に何が良いのかと言われると困るのですけれど、何でしょう、聴いているとワクワクするのです。

一曲目の表題曲、「Butter Corn Lady」のキャッチーさは、思わず口ずさんでしまうほどですし、どこか少し調子っぱずれな感じのトランペットがまた良い。キース・ジャレットのピアノは、以前聴いた時はそれほど良いと思わなかったのですけれど、それはフォノイコライザが悪かったせい。少々まともな再生環境に換えてみれば、びっくりするほど表情豊かで、楽しい曲をさらに楽しくしてくれます。

一曲目の冒頭から「あぁ、いいなぁ」と。楽しい気分は三曲目の「THE THEME」で最高潮に。この曲は色々な盤に収められているのですけれど、この盤のは楽しさが際立っていますね。冒頭の賑やかな雰囲気がもう、好きで好きで。

それともう一つ、言わずにはいられない事が。このレコード、聴衆の歓声や拍手の入るタイミングが絶妙なのです。多分「分かっている」聴衆なのでしょう。歌舞伎などでも、観客が屋号を叫んだりするのにはタイミングがあり、良く訓練された(笑)客でないとタイミングを掴むのが難しいと言いますが、それはJAZZも同じ事。

大興奮の熱狂ではなく、いかにも小規模のライブ的なまばらな拍手や歓声が、かえって録音の生々しさを際立たせています。演奏者との距離の近さを感じさせるとでも言いましょうか、これがまた魅力的なのです。

ところでこのレコード、アートブレイキーの人気が低迷して、メンバーもどんどん入れ替わっていた時代のものだそうで。その関係でか、この盤を評価する声はあまり聴きませんし、高音質のリバイバル盤がリリースされたりという事もないようです。専門家的な評価基準からすると、あまり価値のないレコードという事になるのでしょうか。

でも、この若々しくて勢いに溢れていて、思わず肩を揺らしてリズムを取りたくなるような雰囲気は、ただ高度なだけの演奏にはなかなかないものだと思うのですよ。そして、ジャズやロックの一番の魅力は、まさにこれなのではないかなと。だからこそ、ライブ盤に勝るものはないと言われるのではないでしょうか。

願わくはいつかこのレコードが再評価されて、高音質版がリリースされますように。まぁ無理なのでしょうけれど・・・いっそ、無くならないうちにもう一枚確保しておいた方が良いかも知れませんねぇ。


IN MY PRIME Vol.2

今日の東京は、なんとも残念なお天気でした。雨が降ったり止んだりで、その強さもまちまち。バケツをひっくり返したかのような豪雨の時もあれば霧雨もあり、そうかと思うと強い風が吹いたりもします。これでは出掛けても仕方が無いので、今日はほとんどの時間を掃除などの雑用で過ごしてしまいました。

というわけで、驚くほど話題の無い一日だったのですけれど、雑用ついでに買い貯めていたレコードを全部洗いましたので、さっそく一枚聴きながら感想でも書いてみようかと思います。

イン・マイ・プライムII
タイトル  :IN MY PRIME Vol.2
アーティスト:Art Blakey & Jazz Messengers

上のイメージは、このアルバムのCDのもの。手元のアルバムは粗末な二色刷りのペラペラのジャケットで、アートブレイキーの肖像が線画で入れられています。これはオランダはTimeless Recordsのアルバムで、ステレオ盤のようですね。以前聴いたモノラル盤の"Oh By The Way"が素晴らしい音質だったので、この会社には期待しているのですが、果たして。

一曲めの"Lift Every Voice And Sing"は、少しゆったりめのバラードです。冒頭のピアノが奏でるメインテーマは「閉会」または「エンディング」という感じの、ちょっぴり黄昏れた雰囲気がありますね。この一曲目は導入のような扱いで、そのまま二曲目の"Free For All"に雪崩れ込みます。

以前聴いた時にはその圧倒的なエネルギーに惚れ込んだ"Free For All"でしたが、この録音はそれと比べると非常に軽い気がしますね。もしかするとテンポも速いかもしれませんが、それ以上にあまり腹にこない演奏といいましょうか。まず低音部が軽いですし、ピアノも金管もあまり抑揚が無いのですよね。なんだかスタイリッシュに流し運転しているような感じの演奏でした。

三曲目の"Hawkman"は、やはり冒頭のフレーズが雰囲気があって良いですね。イントロが終わると、少しフュージョンに近いような近代的な雰囲気の、都市的なイメージの曲に変化します。冒頭が陰影の深い、どことなく民族音楽的なエッセンスを感じるフレーズだっただけに、この展開は少し意外でした。

四曲目の"People Who Laugh"は、イントロのパーカッションがちょっと独特。曲そのものは大都会の夜景を思わせるような雰囲気で、タイトルからはおよそ想像もつかないような格好良い曲です。恐らくおどけた感じを出そうとしたのでしょうけれど、冒頭の演出だけちょっと浮いた感じがしますね。

4曲も収めているA面に対して、B面は二曲。いずれも8分以上ある長い作品です。一曲めは"Time Will Tell"。冒頭は、深夜の幹線道路沿いのようなイメージですね。暗闇の中に転々と灯りが続いていて、時折自動車の走行音が聞こえて来るような。この雰囲気は展開してからも続いていきますが、この雰囲気を土台として様々なイメージがオーバーレイされていきます。

タイトルの「Time will tell」は直訳すれば「時が語るだろう」となりますが、意訳すると「いずれ分かる」とか、「時が教えてくれるだろう」という感じになるのでしょうか。夜の幹線道路を延々とドライブしているようなイメージですが、曲の世界はやがてイントロの直後に現れた華やかな景色に戻り、そしてエンディングを迎えます。

最後の"Ronnie's a Dynamite Lady"はいかにもショーっぽい感じの、せわしなくてエネルギッシュで、それでいてどこかモダンな都市のイメージを感じさせる、泥臭さの無い賑やかな一曲です。賑やかだけど熱くない、とでもいいましょうか。舞台の見せ物のようなイメージなのですよね。

A面のやや物足りない感じと比べると、B面は聴いて良かったと思える内容でした。特に"Time Will Tell"は好きですね。ただこのアルバムは録音がいまひとつで、音に力が全然こもっていないのが残念でした。最も顕著に感じるのはキックドラムのモコモコっぷりですが、それ以外の部分もなにか物足りません。籠っているとかスカキンだとか、そういうイコライザで調整出来るような物足りなさではないのですよね。抑揚が足りないのです。

以前Timeless Recordsの"Oh By The Way"を聴いた時は、音質に感激したものでしたが・・・そういえば、あれはモノラルでした。もしかすると、Timelessのステレオ盤はあまり期待出来ないと考えても良いのかも知れませんね。モノラルとステレオではかなりの違いがありますから、エンジニアや設備が対応できなかったのだとしても、不思議はないでしょう。

なかなかどうして、ステレオ盤でBlue Noteに匹敵し得るレーベルというのはないものですねぇ。国内レーベルが絶望的なのはもう基本設定として受け入れるとしても、海外物でもなかなか良いものを見付けるのは難しいようです。もうモダンジャズはBlue Note一択でいくというのもアリかも知れませんね。


ハイレゾ対アナログ

今日は予報通りの雨になってしまいましたね。天気さえ良ければまた夜桜でも見に行こうと思っていたのですが。月曜日に無理をして桜見物して来たのは、どうやら正解だったようです。もっとも、その御陰で疲れ過ぎてしまい、昨晩は何も出来ずに文字通り倒れるように寝てしまったのですけれど。

というわけで、今日はちょっとオーディオのお話を。先日、M2TechのhiFaceをMacOS10.9で無理矢理動かす話を書きましたが、アレを無理に復活させたのには、実は訳があります。それは何かと言いますと、e-onkyo.comさんで、なんとBLUE NOTEのレコード達が、ハイレゾ音源として配信されたのです。これはもう、聴くしかないでしょう?

フォーマットは豪華に24bit/192kHz。恐らくDSDを除けば現在の最高音質のフォーマットと言って良いでしょう。その音質がどの程度のものか、気にならない筈はありません。そして都合の良い事に、配信された中にこのアルバムが含まれていたのです。

LINK
タイトル  :A NIGHT IN TUNISIA
アーティスト:Art Blakey & Jazz Messengers

ならば、聞き比べをするよりほかないではありませんか。というわけで、早速アルバムを購入。アナログ盤と聴き比べてみる事にしました。環境は以下の通りです。

○デジタル
DDC: M2Tech hiFace Professional (tuned by Aurorasound)
DAC: Rasteme UDAC192H

○アナログ
プレーヤ:Pioneer MU-61 自家修理品
アーム :メーカー不明・中古
シェル :Ortofon SH-4BK
カートリッジ:Shure M-97xE (ダイナミックスタビライザ使用)
フォノイコ :Marantz PM6100SA Phono端子

○共通
パワーアンプ:ELEKIT TU-877修理改造品
スピーカ  :B&W DM601 S3

アナログ側の機器がポンコツというかほとんど修理品でガレージ感溢れる布陣になっておりますが、まぁそこは気にしないという事で。既にこの時点で勝負は決してしまっているかのようにも見えますが、まぁ何事もやってみなければ分からないという事はあります。

まずはハイレゾ音源を試聴。一曲目の「A NIGHT IN TUNISIA」ですが、「おや?」という違和感を感じます。最後にこのアルバムを聴いたのはひと月以上前なので、アナログの印象なんてさほど残っていない筈なのですけど、何か変なのですね。なんというのでしょう、いまいち盛り上がらないのです。

確かに音はきれいで、CDのような霞のかかったデジタル臭い音ではありません。シンバルの音などは明らかにこちらの方が澄んでいるように感じますし、ベースもよく締まっていて、全体の見通しも良好。でもなんでしょう、凄くやる気のない音に聞こえます。

試しに音量を上げてみたところ、「やる気のない演奏」から「あっさりした演奏」に昇格しました。どうやら、ダイナミックレンジがとても大きくなった分、主旋律の音量をレコードのそれに合わせるには、音量を上げてやらないといけないようです。音量を上げても五月蝿くならないのは、音が歪んでいない証拠。ここは、24bitの面目躍如ですね。ただ、金管の「ニュアンス」があまり感じられないのは変わりません。

さて、次にLPで同じアルバムを再生してみます。ハイレゾの印象を付けた後なので、まず感じるのは天井の低さとでも言いましょうか。最も如実に差が出るのはシンバルですね。ハイレゾを聴いた後だとやや鼻詰まりに聞こえます。ベースもやや締まりがないですね、確かに個々の音色という意味ではハイレゾが端正。音量を上げる程、この差は顕著になって行くようです。

ただその代わり、金管楽器の熱量が全然違います。アナログは音がぐいぐい前に出てくるのですよね。この自己主張の強い金管や、音色としてはだいぶ鈍い筈なのにハッキリクッキリ聞こえるピアノなどといった特徴は、LPならではのもの。いわゆるハイファイな音ではありませんが、間違いなく生々しい。これは倍音の違いでしょうか。

ではどちらの音が良い音かと言われると、難しいですね。24/192のハイレゾ音源はとにかくクリアで見通しが良く、音量を上げても疲れない、確かに上質な音でした。でも、あまりわくわくしない。LPの音はレンジが狭いしちょっぴり曇っているし、ノイズも乗ります。でもこれでもかとばかりに太くて、やや大味なのに、ハイレゾでは感じないニュアンスの変化が手に取るように分かります。

どちらが生の音に近いのかと言われたら、多分「音色」はハイレゾ、「印象」はアナログと答えるしかないでしょう。要するに、計測機器で比較する分にはハイレゾの方が「正確な音」なのでしょうけれど、聞いてより楽しいのはアナログだという事です。これは恐らく、「写真より絵画の方がリアルに見える」現象のようなものではないかと思うのですが。

まぁしかし、しばしばアナログ対デジタルの対決で声高に言われて来たアナログの優位性も、ここまで来るとだいぶ色褪せて来たかな、という気がしますね。CDがLPより高音質だなんて断固認められませんが、ハイレゾ音源は別です。これだけクリアな音で過去の名盤を聞けるのであれば、無理をしてLPのシステム一式を揃えるより、良いDDCとDACを買って、ハイレゾで楽しむ方が合理的でしょう。

私個人の嗜好としてはそれでもアナログを推したいのですが、もうここまで来ると、質の差ではなく嗜好の差の範囲だと思います。それと、「どちらの音に慣れているか」の差も大きいのではないでしょうか。アナログを一度聴いてしまうと、その後で聴くハイレゾはなんだか出がらしのような音に聞こえます。逆にハイレゾを先に聞くと、今度はLPの音の曇りやレンジの狭さが気になるのです。

フォーマットの優劣の話はともかくとして、ハイレゾ音源化によって、こうした過去の名盤が新しい聴き手を得られるのは、間違いなく価値のある事でしょう。アナログは色々楽しいですが、まず初心者には色々ハードルが高いですしね。また、なかなか入手出来ない盤もありますし、劣悪な盤を売りつける悪徳な中古屋も少なからず居ます。そういう部分の補完として、ハイレゾ音源を積極的に併用して行くのは賢い選択かも知れません。

欲を言えば、ハイレゾ音源で過去の音楽の見直しが進んで、勢いアナログ市場も上向きに・・・なんてことになって欲しいものですけれど、まぁそう上手くは行きませんよね。いずれにせよ、ONKYOさんにはもっと頑張って頂いて、BLUE NOTEのラインナップをどんどん拡充して頂きたいと思います。



HARD BOP

レコードは構造上振動に弱そうなのですが、案外そうでもないのですね。先程レコードをかけている最中に震度3くらいの地震があったのですが、特に音が乱れるでもなく普通に再生を続けているのには驚きました。とはいっても、これ以上強い地震が来たら針飛びしそうですから、やはり揺れるとヒヤリとしますけれど。

さて、先程から聞いていたアルバムというのがこちら。Jazz Messengersにしては珍しく、CBS/SONY販売のアルバムです。

LINK
タイトル  :HARD BOP
アーティスト:Art Blakey & Jazz Messengers

Hard Bopというのは、1950年代後半にアメリカ東海岸で流行っていたジャズの形式です。Jazz Messengersというとファンキーのイメージが強いのですが、彼等がファンキーで大ヒットを飛ばすのはもっと後の事で、この頃は彼等もHard Bopでした。

一曲目の"CRANKY SPANKY"は忙しなく動く主旋律と細かいピアノの刻みが造り出す緊張感が印象的な一曲。キャッチーさよりもテクニカルな側面が押し出された、どちらかといえば難しい類いのJazzでしょうか。とにかく忙しないフレーズが続くので、なんだか急きたてられているような気分になります。まるで新宿の雑踏のような感じですね。

続く"STELLA BY STARLIGHT"は転じて非常にメロディアスな一曲。これは有名なスタンダードで、日本語では「星影のステラ」と呼ばれています。この曲はEddie Higginsの演奏を先に聴いていたのでその印象が強いのですが、Jazz Messengersにかかると別物になりますね。主旋律の熱っぽい演奏の御陰で、星影という単語とはちょっとかけ離れた陽気な曲に。しかし、これはこれでありかも知れません。

A面最後の一曲、"MY HEART STOOD STILL"は、ミュージカル用に作曲された、やはりメロディアスな一曲。但しミュージカル風なのはイントロだけで、美しいピアノのソロから金管のユニゾンに移ると、よーいドンとばかりに高速フレーズが展開します。
ただ一曲目と違って流れに乗り易く、速いフレーズがスムーズに流れるので圧迫感がなく聞き易いのが良いところ。これは、元になった曲のコード進行の賜物でしょう。

B面一曲目は"LITTLE MELONAE。作曲者の娘さんの名を冠した曲ですが、可愛くありません。むしろ謎めいた奇妙な雰囲気の、ともすると不協和音ではないかと思えるような独特の和音構成のイントロが印象的です。曲は全体的には明るい傾向なのですが、それでいてさらりと流れるようではなく、どこかこう、たゆたうというか停滞するというか。ひとつの方向にまっすぐ進まず、まるでそぞろに移り気するような感じの曲でした。

トリの"STANLEY'S STIFF CHICKENS"もまた、主題がちょっぴり妙な雰囲気です。音程が上がって行く途中に挿入される意外な半音がフレーズを曇らせ、どことなく影のある感じを作ります。まるでおっかなびっくり歩を進めるような感じの主題ですね。途中で拍子が変わったりするのも、この曲の特徴のひとつです。全体的に、いつもの親しみ易いJazz Messengersとはちょっと違って、技巧的な側面を強く打ち出したアルバムでした。

Art Blakey & Jazz Messengersは55年結成のグループで、そのブレイクはまだ少し後の事。1958年のMoanin'からだった筈です。
しかも1956年と言えば、初期のJazz Messengersを支えたホレス・シルヴァーが脱退して人気が落ちていた時期ですね。つまりこれは、まだヒットナンバーと呼べるものを持たない彼等の、最も悩める時期のアルバムということになります。もっとも、ヒットを飛ばすようになったきっかけは、メンバーの総入れ替えな訳で・・・まぁ皆までは言いますまい。

なるほどこうして聞いてみると、確かにこう、黄金期と言われた時期のものと比べて、ぐっと掴むものがないのは間違いありません。悪くはないけれど、殊更印象にも残らない。そんな感じがします。どちらかというと、なんとなくBGMに流しておくには悪くないJazzですね。

しかしこのアルバム、一方で音はすこぶる良いのです。ともすると、先日ご紹介したOh-By the Wayのそれを凌駕しているかもしれません。なにしろあまりに音が立体的なので、ステレオだとばかり思って聞いていたほどですからね(笑

ステレオカートリッジで再生すると、音が少し曇ります。その状態での音質はBlue Noteのレコードより悪いな、というくらい。ただ抑揚が少なくなるので、金管が歌わないのですね。妙だなと思ってジャケットを確認したところ、モノラルであることに気がついたのでした。

モノラルカートリッジに変更して再生してみると、音質は劇的に改善します。ピアノは輝くし、金管は歌うし、しかも音は更に立体的になるし・・・。いやいや、CBS/SONY恐るべしです。モノラル盤はCBSとTimeless、Blue Noteあたりが狙い目なのかも知れませんね。

MOSAIC

だいぶ寒くなってきましたね。夕方はまだ寒さが緩いようですが、時間が遅くなると床から冷気が上がって来るようになりました。日中の気温こそ寒かったり暖かかったりの繰り返しですが、晩の気温は順調に冬に近付いているようです。

こう寒いと、朝が辛くなってきますね。まぁ寒さより夜更かしが原因という説もあるのですが、ここは寒さのせいにしておきましょう。なにしろ近頃やたらと充実しているのは、間違いなくレコードと読書の御陰なのですから。

というわけで、今日も当然のようにレコードを聴きまくっています。この時間の充実感は、ちょっと他のものには替え難いですね。レコードを聴くようになってからこちら、以前よりずっと音楽をじっくりと楽しむようになったような気がします。

さて、それでは今晩は、このレコードをご紹介しましょう。

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タイトル  :MOSAIC
アーティスト:Art Blakey & Jazz Messengers

最初は表題曲の"MOSAIC"。映画の導入のような壮大な感じのイントロから、ややオリエンタルな感じのするメロディラインに移り変わります。曲はハイテンポで、まるで高速で街を駆け抜ける列車の窓から、飛ぶように流れていく景色を見て居るかのようです。

続く"DOWN UNDER"は、ちょっと脱力感のある緩い雰囲気の一曲。ややおどけた感じのメロディラインが造り出す雰囲気は、肩の力を抜いてちょっぴり投げやりな笑いを浮かべる時のような印象です。台詞にするなら、「やれやれ、まぁいいさ。」という感じでしょうか。

三曲目の"CHILDREN OF THE NIGHT"は、夜の街をドライブするのに良さそうな、お洒落な雰囲気の作品。冒頭から繰り返すピアノのフレーズが印象的ですね。
ただこの感じ、どことなく聴いた事のあるような気がするのですけれど。あるいはライブ盤で聴いたのかも知れませんが・・・LPだと、こういう時に気楽に曲探しが出来ないのが痛いですね。

B面一曲目の"ARABIA"は、その名の通り割と典型的なアラビアっぽいフレーズで始まります。とはいっても、曲全体を通してその調子を貫く訳ではありません。基本的には弾むリズムのJAZZらしいアップテンポな曲なのですが、ところどころにいつもと違う半音を入れて来る事で、ちょっぴり・・・ほんのちょっぴり異国情緒なのが面白いところ。

最後の"CRISIS"は、名前の割にはゆったりとしたメロディの曲です。最初の数音は明るいのですが、そこから不意に影が差すため、決して明るい印象にはなりません。まるで夏場の、晴れたり曇ったりを繰り返す空を眺めているかのような感じ、とでも言いましょうか。
全体的に空模様のようなイメージで、いつものように都市的な感じはあまりないのが興味深い作品です。

全体を通して特に印象に残ったのは、この最後の一曲ですね。Jazzはなにかと人や街のイメージに繋がり易い音楽だと思うのですけど、私の中でこの曲は空のイメージで、しかも色々な解釈ができるのが面白いと思いました。

例えば、ゆったりとしたフレーズが途切れた時に現れる金管のユニゾンを稲妻や雷鳴と捉えるなら、そこまでのフレーズはどんどん重くなって行く嵐の前の空のようにもイメージ出来ます。最後にこのフレーズが繰り返されるあたり、実はこちらの解釈の方が合っているかも知れませんね。こう捉えると、"CRISIS"という題名とイメージが一致する事になりますし。

振り返ってみると、どの曲も明確に映像化しやすい固有のイメージを持っているアルバムでした。一曲目のイントロをアルバム全体のイントロとして捉えるなら、まるで一軒の映画館の上映タイトルを通しで見たようなアルバムとも言えるかも知れませんね。

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