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日々の便り

 

New Year's Concert 2019

些かならず遅刻しましたが、今年もよろしくお願いします。本来ならば年明け早々に何か書こうと思ってはいたのですが、正月明けからいきなり体調を崩しまして。風邪から気管支炎になり、そのままずるずると一ヶ月引きずって今日まで。いまだオカリナの演奏すらまともにできない有様で、そろそろ登山欠乏症の禁断症状が出そうな今日この頃。そんな鬱々とした年明けの一ヶ月でしたが、そんな私に丁度良いものが届きました。



今年もリアルタイムで楽しませていただきましたが、いやいや毎年ながら素晴らしい演奏でしたね。2017年のニューイヤーほどのインパクトはありませんでしたが、堅実さと新鮮さがほどよくバランスのとれた、実に飽きのこない素晴らしいコンサートでした。どのくらい気に入ったかといいますと、その勢いでティーレマンのベートーベン全集をポチったくらいでして・・・。そちらについては、また次の機会にでも。

さて、そんな素晴らしいニューイヤーコンサートのCD、わくわくしつつ一曲目を再生してまず思うのは、「音が良くなったなぁ」ということです。かつてはSONY + クラシックって最低最悪の取り合わせで、あの頃の音を一言で言うなら「お風呂場クラシック」とでも言いましょうか。DTM作品ばりにメタメタに音を加工してしまうため、演奏が台無しになってしまっていたのですけれど・・・ここ数年のSONYのCDからは、かつての悪癖がほとんど感じられません。

当然音は加工しているのですけれども、その加工がかなりナチュラルな印象になっているのですね。録音の時点で自然な音なんてあり得ない上に、再生環境がさらに音を歪めるわけで、オーディオで自然な音なんてものはあり得ないのですけれど、それでも「自然っぽく」聞かせてくれるこの編集技術には、目を見張るものがあります。

部屋にふわっと広がる軽やかな木管の高音、体を打つような力強い金管の中音、引き締まった打楽器、そしてウィーンフィルならではのつやっつやの弦楽器。一曲目の「シェーンフェルト行進曲」から、その素晴らしい音を堪能させてくれます。本当、嘘みたいにクリアですね。ボリームを目いっぱい上げているのに音がダマにならない。故に、この一曲目のわくわく感がダイレクトに伝わります。

躍動的で鮮烈な若々しさを魅せた2017年、一転してコテコテの保守だった2018年ときて、今年の演奏はその中間という印象。勢いが良すぎてぶっ飛んでしまうようなこともなく、あくまでバランスの良さは維持した上で、やや若々しい印象にまとまっていると言いますか。

一曲目は厚みと迫力をを感じる冒頭からふわっと軽やかなマーチへ。スピードやパワーではなく、ぐっと入った力をふっと抜くタイミングと加減の妙が、曲に心地よい躍動感を与えているように感じます。これはこの指揮者の特徴なのでしょう、いわゆる「お馴染みの曲」でも、アクセントを入れる位置や加減が独特なので、だいぶ印象が違って聞こえるのです。まぁ、これは評価の分かれるところなのでしょうけれど、少なくとも私は好きですね。

曲順と選曲もまた秀逸。これも近年の特徴ですが、ひと頃の指揮者のように似たようなポルカを連打して退屈させるようなことは、決してありません。そしてやはり注目せざるを得ないのは、今年が初の曲たちです。曲としてはそんなに好みではないのですが、4曲めの特急ポルカは良い選択だったと思います。

ポルカとワルツはニューイヤーの花形であり定番ですから外せません。しかし一方で、あまりに定番化しすぎてマンネリ感があるのもまた事実。そんなポルカの枠に、定番と同じ特徴を残しつつ新しさをも同時に感じさせるこの曲を入れてきたのは、上手いなぁと思いました。

個人的なお気に入りは、まずは第二部一曲め、トラック7の喜歌劇「ジプシー男爵」序曲です。毎年、前半後半の一曲めはつかみの一曲ということもあり、印象深い曲になることが多いのですよね。この曲は曲自体が好きであることに加え、今年の起伏に富んだ、それでいて実に滑らかで上品にまとまった演奏に惚れ込みました。フォルテよりピアノにゾクゾクするタイプの演奏ですね、これは。

今年初登場シリーズのひとつ、「エヴァ・ワルツ」もオススメの一曲。騎士物語の歌劇のための曲のようで、冒頭はなんとも勇壮で壮大な印象です。よもやここから憂いを帯びた美しいワルツへと繋がるなど、誰が予想できましょう。新鮮な驚きとともに、艶やかなワルツを楽しむことができます。

もうひとつの初登場曲、「幕間のワルツ」は、これまた独特なキャラクターを持つ作品。私は「目次」または「表紙」という印象を受けました。特にBGMっぽい印象の曲とでも言いましょうか。曲と一緒に何かの解説の動画でも流したら合いそうな気が。なるほど「幕間」というテーマに実によく合致した作品だと思います。

最後に、毎年指揮者の違いがもっとも現れる、結びの二曲について。まずドナウですが、美しさが際立つ演奏だったような気がします。保守的な指揮者がよくやるスロースタートですが、それでいて嫌らしいしつこさは感じさせず、リズムに乗ってからはティーレマンならではのアクセントの妙で軽やかに。テンポを結構大きく揺らすタイプの演奏なのに、こんなにも全体の印象は軽やかでスムーズになるものなのだなと感心させられました。

そして締めのラデツキー、ティーレマンは聴衆を細かく指揮するタイプのようですね。手拍子が入る部分はだいぶ少なめに抑えられていますが、それでいてアクセントとして丁度良い塩梅にうまくコントロールされています。全体的に「お祭り騒ぎ」的な楽しさはありませんが、逆に聴衆との一体感を感じさせる、楽しい演奏でした。

一言でまとめると、つまりクリスティアン・ティーレマンとは、「巧い」指揮者なのだなと。楽しいのに上品という、なかなか見られないバランスのニューイヤーコンサートでした。これは2017年のとはまた違った意味で、何度でも聴けそうなアルバムです。

THE GOLDBERG VARIATIONS

今日の東京は、久々の雪。途中から雨になったのでさほど積もりはしませんでしたが、それでも幾らか残った雪が空気を冷やすので、今晩はいつになく冷え込んでいます。まぁこのところの暖かさが異常だった訳ですから、この寒さはむしろこの季節らしいと言えるでしょう。

ところで、雪が降る度に思うのですが、雪が降った日の晩の空気感というのは、なにやら独特なものですね。不思議と静かに感じますし、しかもその静けさには少なからず厳かな感じが伴う気がするのです。こんな晩には、なんだか無性に高尚な事をしたくなるもの。例えばそうですね、こんな晩に聴くのなら、ジャズやロックではなくてクラシックに限るでしょう。

というわけで今晩は久々にモノラル針(AT-MONO3/LP)に付け替えて、このレコードを聴いています。

Bach: Goldberg Variations, Bwv 988 (1955)
タイトル  :THE GOLDBERG VARIATIONS
アーティスト:GLENN GOULD

言わずと知れたバッハのゴールドベルク。クラシック好きでこれを知らない人は居ないでしょうけれど、それ以外の方のためにざっくり説明してしまいますと、要はベース1曲+アレンジ30曲からなる小曲集、といったところ。「アリア」と呼ばれるベースとなる曲が最初と最後にある外は、全てそのアリアのアレンジなのです。

但し、アレンジと言ってもPOPSのアレンジとは次元が違います。クラシック慣れしている人なら原曲の特徴を簡単に聞き分けられると思いますが、そうでないとほとんど違う曲にしか聞こえないでしょう。それくらい個々に個性のあるアレンジが、たった一曲のテーマから生まれてしまうのですから、バッハの天才ぶりが良く分かりますね。

演奏には高度な技術が要求されるからでしょうか、現在は多くのピアニストが挑む、一種の課題曲になっています。とはいっても、グールドがこれを録音した頃はそうでもなかったようで、デビューアルバムにこのゴールドベルクを選択した若き日のグールドは、レコード会社から反対を受けたのだとか。しかし、結果的にこのアルバムは大ヒットし、ゴールドベルクとグールドを世に知らしめる結果になったのだそうです。

グールドの演奏はとても力強く、速いのが特徴。決して乱れてはおらず、むしろ整っているのですが、厚みのある強い音が端正さを感じさせません。ゴールドベルクのアルバムはCDを何枚か持っていたのですが、こんなにも力強いゴールドベルクは初めてです。実をいうと最初はBGMにしようと思ってかけたのですが、これはBGMには不向きですね。

最初のアリアはそれほどでもないのですが・・・いえ、実をいうとそもそも一音目からこう、「しっかり感」が出てはいるのですけれど、その力強さを最初に印象付けられるのは第一変奏でしょう。この曲は低音部も高音部も細かく動き回るアレンジなのですが、滑らかに動きつつも音が弱くならないのですね。変に力を入れると音の連結が乱れるのですが、これは断じてそういう音ではありません。自然に、滑らかに、しかし強いのです。

起伏に富み、表情豊かで、しかもフォルテの迫力が凄いと来れば、否応無しに注意を惹き付けられてしまいます。時折入るフォルティシモなど、来るぞと思っていないとびくりと肩を振るわすほどで。この溢れるエネルギー感こそが、若さという奴なのでしょうか。

大人しくお行儀の良い感じの堅苦しいゴールドベルクとは一線を画す、エネルギッシュなゴールドベルク。ゴールドベルクは退屈で眠くなるという方にもお勧め出来る、刺激的なアルバムだと思います。


胃痛にバルトーク

昨日までは酷い胃痛に悩まされていた私ですが、今日はようやく痛みから解放されました。あの胃痛はどうやら、一昨日から続く神経性のものだったようですね。というのも、気晴らしに購入したバルトークのヴァイオリン協奏曲を徹夜で聴いていたら、いつのまにか直ってしまったからです。

我ながら単純というかなんというか。しかし、もっと唯物的な人格だと思っていたのですけど、私も案外精神的な存在だったのですね。
良い音楽が万病に効くかどうかは知りませんが、私の精神には効くようです。ただし、その質は大いに問われるところですけれども。生半可な演奏では、かえって苛々しますから。

というわけで今晩は、胃痛に効いたバルトークをご紹介しましょう。

LINK
http://www.e-onkyo.com/music/album/chan10690/

タイトル :Violin Concertos Nos. 1 & 2 - Viola Concerto
演奏   :BBCフィル&James Ehnes

まず印象的なのは、とにかく演奏が素晴らしいという事。ソロは端正で非常に正確なのですが、それでいて力強さがみなぎっており、表現力は圧倒的です。正確さと起伏に富んだ表現は両立されないことが多いのですが、この演奏者はその両立をハイレベルでこなしているのですね。

オケの演奏も、一糸乱れずという印象。ダイナミックレンジの大きい劇的な曲ばかりなのですが、その爆発的な展開のさなかでさえ、音が粗暴になる事はありません。きちっと整っていて、美しいのです。素晴らしいソロと、素晴らしいオケ。ドラマチックでありながら決して乱れる事がなく、その技術の高さにまず圧倒されます。

曲は、やや癖が強い印象。言うなれば、モーツァルトのようにキャッチーなメロディを中心に曲を組み立てるのではなく、ブラームスのように、個性の強いメロディとオケの調和で曲を編み上げていくような、と言いましょうか。
特にヴァイオリン協奏曲1番は、ブラームスを彷彿とさせる展開です。

ところが、バイオリン協奏曲第二番は、突然近代的な印象に。ブラームスよりはガーシュウィンに近いリズムの使い方をしているように感じます。この、ミュージカルっぽい展開の仕方も、ガーシュウィンを彷彿とさせられますね。

転じて、晩年の作であるヴィオラ交響曲は、再び古典的な表情を持っているように感じました。特に第一、第二楽章は、やっぱりなんとなくブラームスを思わせるような。ところが、第二楽章の終盤から第三楽章にかけて、表情が一変するのです。

これは、民族音楽のテイストでしょうか。序盤はまるで儀式的な激しい舞踏のような、ちょっぴり妖しい雰囲気です。ところが本当に突然調子が変わって、中盤は健やかでやや中世的なメロディになります。これが再び転じて、終盤はまた序盤のメロディに。
まるで一つの曲の中間に、リミックス的に別の曲を挟んだような構造になっているのです。

なんだか不思議な構成なのですが、それでいて破綻している訳でもなく、普通に良い曲なのですよね。実を言うと私は、この不思議な第三楽章が一番好きだったりします。

普段は古典ばかりで、こういった新しめの時代の作曲家の作品は聴かないのですが、聴いてみるとなかなか良いものですね。もともとブラームスが好きだった事もあり、バルトークは肌に合うようです。

ところで、聴いていてふと思ったのですが・・・久石さんって、音の使い方がどことなくバルトークに似ているような気がしませんか。気のせいかも知れませんが、久石さんも時折、バルトークのようなちょっと不思議な節回しを使うのですよね。あとは、リズムの変化の付け方も似ているような気がするのです。
まぁ、特に根拠がある訳でもない、ただの思いつきなのですけど。


ドヴォルザーク:交響曲第7番/第8番

皆さん、連休初日はいかがでしたか。東京は良いお天気で、絶好の行楽日和でしたね。そんな天気とは裏腹に、私の連休初日はひどくブルーなものでしたが、ようやく各種雑用も終えて部屋でくつろいでいます。

こういう時間のお供は、やっぱり珈琲と音楽。ジャンルはクラシックが良いですね。ジャズやロックも好きなのですけど、本当に疲れてしまうと、なぜかクラシック以外は苦痛になってしまって駄目なのです。
目を閉じて、体の力を抜いて、ほーっと息を吐きながら浸り切る事ができるのは、やっぱりクラシックなのですよね、私にとっては。
というわけで、本日は久々に音楽のを話を。

LINK

アルバム名:ドヴォルザーク:交響曲第7番/第8番
販売   :ナクソスジャパン
指揮   :マリン・オールソップ
演奏   :ボルティモア交響楽団

上の画像は、今聞いているアルバムのオリジナル版です。e-onkyo.comというサイトでこれの24/96版のファイルが配信されていまして、私が実際に聴いているのは、こちらのハイレゾ音源版ですね。

http://music.e-onkyo.com/goods/detail.asp?goods_id=nbd00103

RASTEMEのUDAC192HからTU-877改を通して再生中。さすがにハイレゾ音源というだけのことはあって、音の生々しさが全然違います。44.1kHzのCDとはダイナミックレンジも別次元ですので、クラシック好きの方には是非このハイレゾ音源を試して頂きたいですね。

もちろん、良いのは音だけではありません。NAXOSがわざわざハイレゾ音源としてリリースするだけの事はあり、メリハリがあってドラマチックかつ美しい演奏です。
まず感じるのは、歯切れの良さですね。例えば交響曲第七番の第四楽章の序盤、ストリングスが勇ましいフレーズを奏でる部分があるのですが、このストリングスのスタッカートの気持ち良い事と言ったら。久しぶりにバイオリンを引っ張り出したくなったほどです。

管楽器の表情も素晴らしく、同じく第七番の第二楽章の冒頭などは、思わず溜息をついてしまうほどの繊細で優しい表情を見せます。この情景はなんでしょう、喩えるなら柔らかな霧に包まれた街や森に、朝日が射し始めるかのような。そんな涼やかで柔らかで、潤いのある音の世界が広がります。

お勧めは、やっぱりこの交響曲第七番第二楽章と、第四楽章。そして、交響曲第八番は第一、第二楽章が共に良い感じですね。一押しは第二楽章ですが。
今は疲れているというのもありますが、この穏やかで美しいフレーズは本当に沁みます。喩えるなら、森林浴でもしているかのような気分。

もちろん穏やかなだけではなく、時折はっとするような緊張感のあるワンフレーズが現れたりもします。ただ、そのままシリアスに突っ走るのではなく、すぐに転じて柔らかい印象のフレーズで受けとめるのですよね。

このほんの僅かな緊張が、つづく柔らかさ、優しさを強く強く印象付けるのです。これが本当に心地良いのですよね。例えば、暖かいお風呂に浸かったとき、体からふっと力が抜けて、まるで疲れがお湯に溶けて行くかのように感じる、あときの感覚。疲れたときはこれに限ります。

ドヴォルザークと言えば有名なのは「新世界から」ですよね。おかげで、クラシック初心者からは、激しい曲を作る人と思われている場合が多いようです。しかし、実はそうではないのですよね。むしろ、有名なあのフレーズはドヴォルザークの作品の中でも、とりわけドラマチックな部分なのではないでしょうか。

彼の作品はどちらかといえば健やかで、どこか牧歌的。むしろ優しいフレーズこそが、彼らしさなのではないかと私は思っています。
そして、彼の曲の優しさの良いところは、決してネチネチとイヤラシくならないというところ。いつも素朴で、どこか清潔感があるのです。言うなれば、描かれているのが人間の感情や内面世界ではなく、むしろ自然の情景である、ということなのではないかと。

ネチネチ系のフレーズと言えば、すぐに思い浮かぶのはチャイコフスキー。私、基本的に嫌いなのですよね、チャイコ。白鳥の湖とか、イラっとくるのです。ああいった類いのネットリ系フレーズがお好きな方には、ドヴォルザークは逆に物足りないかも知れません。

ところで、ドヴォルザークはブラームスの弟子だったそうですね。そのせいか、彼の作品にはブラームスの影響が色濃く見られます。例えばこの交響曲第七番にはブラームスの交響曲第三番が、交響曲第八番にはブラームスの交響曲第四番が登場するとかしないとか。
思えば、曲の傾向も似通っている気がしますね。ブラームスもドヴォルザークも、森や山、雨や霧といった自然の情景がとても良く合います。

ただ、ブラームスとドヴォルザークなら、ドヴォルザークの方が親しみ易いですね。ブラームスはドヴォルザークをかなり気難しい哲学者にしたような感じ、とでもいいましょうか。感動的だし表現力も素晴らしいのですけど、親しみ易さならやっぱりドヴォルザークかな、と。師弟共に大好きな作曲家なのですが、あえてどちらか一方を推すなら、私はドヴォルザークを選びます。

もし「新世界から」しかご存知でないなら、是非交響曲第七番を聞いてみて下さい。きっと、ドヴォルザークのイメージが変わると思いますから。

グリーグ・ピアノ協奏曲イ短調

LINK


販売:キングレコード
番号:GXP-9004
シリーズ:STEREO LABORATORY -LONDON CLASSICS- Vol.15
タイトル:グリーグ ピアノ協奏曲イ短調
ピアノ :ラドゥ・ルプー
指揮  :アンドレ・プレヴィン
演奏  :ロンドン交響楽団

例によって映像はCDバージョンのものです。Amazonアソシエイトの映像はサイズがまちまちなので使いにくいですね、ちゃんと統一してくれれば良いものを。CDの映像で気付かれた方もおられるかと思いますが、このレコードのオリジナルマスタはDECCAのもので、それをキングレコードがステレオ・ラボシリーズのなかの一枚として販売したのが、このアルバムのようです。

録音は1973年、ロンドンにて。ちょうど我が家のPioneer MU-61が販売されていた当時のものですね。収録されているのは、上のCDの後半3曲、グリーグのピアノ協奏曲のみです。手元のレコードのジャケットは黒地で、中央上側の赤い円形を背景に、なぜか木管のバルブ部分が描かれているのですよね。おかげで私はジャズか何かだと思ってタイトルを読まずに再生したのですが、クラシック、それも大好きなグリーグだったので驚いたものです。

まず音質ですが、最初に聴いた時には、とにかくそのド迫力に圧倒されました。とにかくダイナミックレンジが広いのですね。小さな音も鮮明で、それでいて大音量の部分のパワーが半端ではありません。なにより意外なのは、割とユルめの低音になる小出力のシングルアンプで、低音部が非常に引き締まった音になった、ということでした。

低音の量感が非常に印象的なのですが、低音楽器の倍音がきれいに再生されているせいか、ボワついた印象にはならず、腹に響きます。しかも、非常にスピード感があるので、全体でバンっと音を出すようなシーンでは、思わず首をすくめたくなるほどです。

主役のピアノも、オケの迫力に負けてはいません。むしろ、たった一台でオケと渡り合うほどです。A面の冒頭はピアノのソロから始まるのですが、最初の一音、鍵盤を強く強く叩き付けるその音は、思わず目を見張るほどのものでした。目の覚めるような、最初の一撃。そんな感じの導入でしたね。

一回目のレコードプレーヤー修理が完了したとき、最初にきちんと再生したのがこのアルバムだったのですが、この演奏が私をレコードの底なし沼に引きずり込んだと言っても過言ではありません(笑
手元のCDやハイレゾ音源のグリーグと聴き比べても、ここまでの歯切れよさ、音の広がり、ダイナミックレンジ、そしてスピード感を併せ持った録音はなかったものですから、それはもう夢中になって何度も再生したものです。

ただ、これを最高だと思ったのは、まだ他のレコードを聴いていなかったからなのですよね。昨日ご紹介したCBS/SONYのレコードと比べてしまうと、いかんせん音に粗さを感じます。非常に迫力があるのですけど、音が暴れ過ぎていると言いますか。ややザラッとした、粒子の粗い印象を受けるのです。それは特に、弦に現れているように思いますね。それから、大音量の部分など、音が少々割れ気味になっているところもありますね。

ただ、それでいながら、ピアノの表現は特筆すべきものがあると思いました。というのは、音色以外の音もちゃんと聴こえるからです。ピアノをよく知っている人なら、よくある「ピアノの音」は少々不自然な音に感じるかも知れません。というのは、それらは大抵オフマイクで録音したかのように弦の音のみが聞こえる状態でありながら、まるでオンマイクであるかのようにタイトな音で鳴っているからです。

ピアノを間近で聴いたり、実際に弾いたりすれば分かることですが、本当は「ピアノの音」が出る前に、ハンマーの音が聞こえるのです。そして、「ピアノの音」のあとにも、ハンマーの下がる音が聞こえます。それは微かなノイズなのですけど、それが聴こえるかどうかでピアノの表情は全然違って来るのです。これは、ピアノに限ったことではありません。ギター然り、バイオリン然り、音色とノイズは本来不可分な表裏一体のもので、共に音楽を表現している重要な要素なのですね。

このレコードのピアノは、そういうピアノの本来の音が持つニュアンスを生々しく伝えていて、変に奇麗なところだけ抽出された「ピアノの音」ではないのですね。もちろんそれは、ただ大きな音で収録されているとかいうような、単純な補正ではありません。柔らかい音は柔らかく、弱い音は弱く、それでいてときに強く鋭く、ピアノが歌います。

高音質って、何なんでしょう。そんなことを、ちょっと考えさせられる一枚でした。


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