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日々の便り

 

THE SCENE CHANGES

今日はまた一段と冷えましたね。今朝は通勤途中に、今年初の氷を見掛けました。東京は霜もまだ降りていないようですが、そろそろ鉢植えに冬の備えをした方が良さそうです。それにしてもこう冷えると、部屋がなかなか暖まらないので弱りますね。そして暖まらないと言えば、アンプもなかなか暖まってくれないので困ります。

不思議なもので、冷えきった真空管アンプというのは、なぜかしょぼくれた音を出すのです。この室温ですと、すっかり暖まるのには30分くらいかかるでしょうか。つまりレコードを一枚聴き終えたところで、そろそろ本番かなといったところ。

こういうやたらと悠長なところが、現代人の生活スタイルには合わなかったのでしょう。軽薄短小の時代とも言われたあの頃、こういった装置が世の中から姿を消して行ったのも、世相の変化によるものであったのは間違いありません。人々の重きを置くところが、昔とは違ってきたということなのでしょう。

とはいえ人間とは天の邪鬼なもので、そういう忙しない日常も極まると、何故か急にこういう悠長なものが恋しくなったりするものです。私などその典型ですね。というわけで、本日もスローでアナログな時間を楽しんでいます。

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タイトル  :The Scene Changes - Amazing Bud Powell Vol.5
アーティスト:Bud Powell

一曲目、"CLEOPATRA'S DREAM"はスタンダードですね。ただ、このオリジナル盤の「クレオパトラ」はそれ以外の人々の演奏と比べると、高速でパワフル。ついでにいつも通り快調に唸り・・・もとい、歌っております。ただでさえ細かいフレーズを高速で演奏しているせいでしょうか、この曲はちょっとミスタッチが多いようで、神経質な人はちょっと気になるかも知れません。

二曲目の"DUID DEED"は、ミュージカルなら忍び足でもしているシーンに使われそうな、ちょっとミステリアスな雰囲気の主題が印象的な一曲。基本的にざっくりパワフルな彼の演奏なのですけど、稀に何気なく入る装飾音の妙な滑らかさにぐっときます。

三曲目の"DOWN WITH IT"は、再びハイテンポな一曲。冒頭の雰囲気は二曲目と似ていますが、後半は夜のビル街を思わせるようなお洒落な感じになります。四曲目もパターンは同様で、華やかに転じた後は都市部の夜を思わせる雰囲気に。タイトルは"DANCELAND"だそうです。

A面最後の"BORDERICK"は、牧歌的で明るいテーマが非常に印象的。決してキラキラしている訳ではないのですが、例えばクリスマスイルミネーションを思わず思い浮かべてしまうような、温かさと明るさを感じる親しみ易い一曲です。メロディラインはとてもキャッチーで、思わず口ずさみたくなりますね。いつになく幸せそうで、子供の笑顔が目に浮かぶような作品でした。

B面も、一曲目は高速ナンバー。"CROSSIN' THE CHANNEL"は、タクシー乗り場の景色を早回しで見たような、忙しない雰囲気の作品でした。続く"COMIN' UP"は転じてスローな一曲。シンプルな和音を連打するところといい、このリズムラインといい、そこかしこにエスニックな雰囲気を感じます。

"GETTIN' THERE"はA面の中盤と良く似た、ミステリアスなフレーズから華やかなフレーズへと転じるパターンの、都市的な雰囲気の一曲。そして最後の表題曲"THE SCENE CHANGES"は、再び明るく楽しげな作品です。がやがやと賑やかなバーやレストランの光景とよく合いそうな感じですね。

印象的なのは、ラストの唐突感です。通常、曲はそれなりに「終わるよ」と分かる終止形を作って結ぶものですが、この曲に限っては、まるで演奏を途中でぶった切ったかのように、テーマの繰り返しの最中に突然終わるのです。

それはまるで、脈略も無い日常のワンシーンをおさめた活動写真が、フィルム切れでぱたりと終わるかのようで。突然終わる事で、メロディはその余韻を強く残します。それはフィルムが終わった後も続いたであろう光景を想像させるようで、ちょっと不思議な感覚でした。あるいは逆に、不意に夢から覚めるような感覚なのかも知れません。

A面B面ともラストの一曲がたいへん印象的でしたが、特にA面の"BORDERICK"は好きですね。これを聴きたいがために、何度もA面を再生してしまう程です。牧歌的で力強く明るいメロディラインは、言ってみれば「ハートフルな」印象。但しその明るさは昼間の光景よりも、闇の中に輝く灯火を連想させるのです。

後で調べてみて分かったのですが、実はこの曲、彼の息子さんのために書かれた作品だったらしいのですね。他の曲には見られない温かさや優しさがメロディから滲み出しているのは、どうやらそういう訳であったようです。ちなみにその息子さんというのは、アルバムジャケットの右端に写っている彼。パパ似ですね。

Bud Powellはこのアルバム収録の後ヨーロッパに渡りますが、既に精神病(パラノイア)と闘っていた彼のその後の生き様は、悲惨なものであったといいます。そんな彼の人生を想いながら聞くと、この曲の温かさは殊更沁みますね。

ところでこのアルバム、Bud Powellのアルバムの中でも、かなり人気の高いものなのだそうです。恐らく、印象的なメロディラインを持つ作品が多い事がその理由なのではないでしょうか。A面中盤は似たような雰囲気の曲が続きますが、それでも退屈する事はありません。自然ともう一度かけたくなるような、親しみ易い一枚だと思います。

A Portrait of Thelonious

風邪っぴきもついに五日目。週末は自重して静養に努めたつもりだったのですが、治りは思わしくありません。しかもここへきて、新たな問題が発覚してしまいました。なんと、左の奥歯と糸切り歯の間に大穴が・・・どうやら、詰め物が外れてしまったようなのです。というわけで、今週末は歯医者行きが確定致しました。

先週末も寝込んでいた以外、出来た事と言えばレコード洗浄だけでしたけれど、なんだか今週末も同じパターンになってしまいそうですね。まぁ不景気な顔をしていても良い事はありませんから、せめて洗ったレコードでも聴いて気晴らしを。

つい最近まで、私はArt Blakey専門でレコードを買い漁っていましたが、このところ、ちょっと裾野を広げる事を試みています。といっても、いきなり知らないアーティストのレコードを買うのも博打が過ぎると思いますので、とりあえずJazz Messengersと関わりのあった人々を少しずつ。

というわけで、本日はこちらのレコードを。

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タイトル  :A Portrait of Thelonious
アーティスト:Bud Powell Trio

バド・パウエルは、Art Blakey & Jazz Messengersと共演したこともあるアーティストで、いわゆる「ピアノ・トリオ」形式の創始者でもあります。また、彼はこのアルバムのタイトルになっているセロニアス・モンクと親友だったのだそうで。そんな彼がモンクの作品集を演奏するというのは、ある意味自然な事でしょう。

さて一曲目、"OFF MINOR"ですが、演奏が始まってまずびっくりするのは、曲の間中彼が歌うというか唸るというか、ニャーというかギャーというかワーというか・・・とにかく下品なダミ声でニャーギャーワーとメロディを歌っている、ということです。しかも音痴。

これはどうやら彼の癖のようで、二曲目も同じくニャーギャーやっていますね。思えば、Jazz Messengersのアルバムでも、彼がピアノを担当しているライブものには同じ声が入っていましたっけ。てっきり観客が歌っているのかと思っていましたけれど、実は演奏者の癖であったとは。これは・・・果たしてありなのでしょうか(笑

とはいえ、さすがにスローな曲ではやらないようです。三曲目の"Ruby My Dear"は夜空が似合いそうなスローなナンバーなので、声無しの演奏を堪能出来ました。キラキラとした高音のピアノが星の瞬きのようなイメージで、なかなか素敵な一曲です。

続く"No Name Blues"は再び明るく軽快な作品。天気の良い日に、人通りのまばらな道を弾む足取りで歩くようなイメージ、とでもいいましょうか。軽やかさが際立っていて、それでいて賑やかとは違う爽やかな一曲です。なので、当然のようにバドはパゥパワパゥと。しかし不思議なもので、この曲に限ってはこのパゥパワパゥが曲と良く合うようです。

B面一曲目は"Thelonious"。キャッチーなメロディが覚え易い一曲で、雰囲気としては何かのオープニングテーマのような感じですね。そしてもちろん彼は唸ってます、もとい歌っています。ここまでくると免疫が出来るのか、なんだかこれはこれでOKのような気分になってきました。

続く"Monk's Mood"は灯りを落としたラウンジに似合いそうな雰囲気の、洒落たテンションコードを多用するスローな一曲。曲自体はどこか深遠なイメージなのですが、バドの演奏はザックリなので以下略。しかも今度は歌っていますし。これは繊細に演奏したらきっと、目を閉じて聞き惚れるような一曲になる筈なのですけど・・・。

以降二曲は再び軽快なもので、バド・パウエル・スキャット(笑)も良く合います。彼のピアノは軽快且つパワフルな、しかもざっくり大味でミスタッチも多い演奏なので、こういう勢いのある曲の方が良さが出るようですね。こんな風に調子良く飛ばしている時、彼のスキャットは曲とよくマッチしていて、それほど邪魔になりません。

最初のうちはこのスキャットが気になって仕方ありませんでしたが、慣れてくるとそういうものと思って聴けるから不思議なものですね。レコードに納められている聴衆の反応も頗る良いものですし、これはこれでひとつのスタイルとして認められていたのでしょう。

考えてもみれば、当時のジャズは基本的には生で聴く音楽であって、録音再生は副次的なものでしかありませんでした。つまり通常、聴衆の目の前には、全身で音楽を表現しているバド・パウエルそのものがあった訳です。ならば、その彼が楽しげに何か口ずさんでいたところで、そこに不自然さなど感じる道理はありませんよね。

あまりテクニカルなところを強調し過ぎず、どちらかといえばシンプルに軽快に、パワフルながらもきちんと抑揚を付けて演奏してくれる彼のスタイルは、私の好みです。最初は何事かと思いましたが(笑)聴き終えてみれば、また聴きたくなる素敵な一枚でした。


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