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日々の便り

 

THE RUMPROLLER

今日の東京は、晴れ2割曇り8割という感じの、なんともハッキリとしない天気でした。気温の方も昨日に引き続き4月並みだったようで、長袖でないと寒いくらいでしたね。まったく、5月から7月の陽気だったというのに、6月に入った途端4月の陽気とか、一体どうなっているのでしょう。まぁ愚痴ったところで始まらない事ではありますけれど。

天気の方がそんな有様でしたから、今日は歯医者に行った以外、これといって何もない一日でした。一応野川へは行ったのですけれど、何しろ天気が天気でしたし、これといって珍しいものも見ませんでしたし。強いて何かした事を挙げるとするならば、帰りにダイソーで細々と仕入れて、部屋を少し整理したり服を修理したりしたことくらいでしょうか。

そんなわけでこれといって書く事もなく、どうしたものかと考えていたところ、ふとレコードプレーヤが目に留まりました。そういえば、ここ二ヶ月ほど音楽を聴いていませんでしたね。なにかと精神的にも体力的にもギリギリの毎日だったので、すっかりご無沙汰になってしまっていました。

音楽自体は大好きなのですけれど、音楽を聴くと体力を消耗するので、バテていると駄目なのですよね。最近はテレビの音も辛いので、人工的な音のある場所からは、逃げるようにしていたくらいです。でも、今日は何もしませんでしたし、体力は余裕。ならば久々に一枚聴いてみようという訳で、このアルバムをかけてみました。


The Rumproller
タイトル  :THE RUMPROLLER
アーティスト:LEE MORGAN

レコードを取り出してみてまず思うのは、収録時間が短いな、ということ。大抵のLPはかなり内側まで溝を切ってあるものですが、このアルバムは両面とも1/3くらいは盤面を余らせています。収録曲数はA面が2曲、B面が3曲。A面の2曲は少々長めなので、時間が半端になってしまったのかも知れませんね。

一曲目は表題曲の「THE RUMPROLLER」。速歩きくらいのペースで淡々と刻む煌びやかなピアノの伴奏の上で、トランペットが奔放に動き回るタイプの曲です。序盤はちょっと「ちょい悪(死語)」という雰囲気がありますが、それ以外の部分はむしろ明るめのお洒落な感じとでも言いましょうか。市内循環バスのようなペースの遅い乗り物に乗って、賑わう市内をずっと眺めているようなイメージの曲です。

ただ、曲が始まってまず感じるのは違和感でした。これまで聴いて来たリー・モーガンの作品はどれも音が非常に伸びていて力強く、一切迷いなしに突っ走っているような若々しい印象だったのですけれど、この作品ではそんな慣れ親しんだモーガンの音が鳴りを潜めています。リズムもなんというか、「スパッ」とジャストなタイミングにこないことがままあり、どことなく煮え切らないのですよね。

何度も聴いていると慣れてしまうので次第に違和感を感じなくなりますが、例えば「CANDY」を聴いた後でこのアルバムを聴いたなら、その印象のあまりの違いに驚かれるに違いありません。そのくらい音に勢いがないというか、何かを確認しながら微調整を繰り返しているかのような印象を受ける音でした。

二曲目の「DESERT MOONLIGHT」はそのタイトルから連想される通り、ややオリエンタルな雰囲気の漂うメインテーマが印象的な曲です。序盤は静かに控えめに、深夜の静けさを思わせるような感じで。強弱の差の大きな曲ですが、弱いところの音が、やはりなんというか落ち着きません。しかし展開していつものジャズ風味のフレーズが表れると、音が安定して聴き易くなります。

ところで、この哀愁漂うメインテーマの部分は、なんと日本人の作った童謡なのだそうです。作詞は加藤まさを氏、作曲は佐々木すぐる氏で、大正期の作品なのだとか。これをリー・モーガンがジャズ化した訳ですが、何故かクレジットは彼のものになっていますね。一体どういう経緯で彼がこの曲を知ったのか、そのあたりのエピソードが気になるところです。

B面一曲目は「ECLIPSO」。ソシアルダンスに使えそうな、明るくリズミカルな一曲です。この南米風のリズムはサンバでしょうか。忙しく動き回る主旋律の熱気は、明るく乾いた景色を連想させます。日干し煉瓦やサボテン、コバルトブルーの明るい空が似合いそうな作品でした。この曲は、リー・モーガンのオリジナルのようですね。

続く「EDDA」は躍動感溢れるアップテンポな一曲。テンポはかなり速い作品ですが、疾走感ではなく躍動感になっているのは、三拍子の御陰でしょう。ゆらりゆらりという三拍子独特のリズム感が、ジャズ独特のスウィングによってさらに強化され、心地良い踏み込みの加速感を与えてくれます。この曲はピアノが都会的な雰囲気を醸し出していますね。近代的な都会の風景(但しアメリカの)が似合いそうです。

最後は「THE LADY」。甲高いミュートトランペットの音色で始まりますが、これがなかなか良い音色で。優しく穏やかに、それでいて芯のある演奏になっていて、これまでのどこか戸惑ったような音色とはひと味違います。曲はタイトルからも連想される通りのスローなバラードで、例によって灯りを落とした部屋や、高層階から見下ろす夜景が似合いそうな雰囲気。ゆったりと寛ぎつつ聴きたい一曲です。

全体を通して聴いてみると、A面よりもB面の方が印象が良いですね。メロディ等々はどの曲も素晴らしいので、この当初のモーガンとはだいぶ違う音色さえ気にならなければ、かなりお勧めできる一枚だと思います。実は私はこの音色がかなり気になってしまって、買った当初は最後まで聴く事ができずにA面の途中で止めてしまったのですけど。ただ、改めて聴いてみると、そんなに酷評するほどには悪くないと思うのです。

やはり先入観付きで聴く場合と、ある程度それがリセットされた後で聴く場合とでは、印象が大きく異なるものですね。これまでも何枚かこういうイメージの変化を経験したアルバムはありましたが、そんなアルバムがまた一枚増えました。やはり今でもA面の音は気になってしまいますが、それでもたまに聴いても良いかなと思うくらいに、曲が良いアルバムだと思います。

CANDY

今日の東京は、異常に寒い一日でした。土日は暑くて半袖が欲しいくらいだったのに、転じて暖房が欲しくなるような気温です。春の気温は不安定なものとはいえ、さすがにこれはちょっと、尋常でない感じですね。まぁここ数年はこれが当たり前になりつつあるわけですが。

天気の方も最悪で、朝から雨。昼前には止んだようですが、私はどこにも出掛けずに過ごしました。といっても、怠けていた訳ではありませんよ。本当はそのつもりだったのですけれど、何故か大掃除が始まってしまい、気がついたら一日中大いに働いて、へとへとになっていました。

連休の最終日ではありますが、今日は休日らしい事は何もしていません。掃除以外で何かした事はと言えば、ずっとレコードをかけていた事くらいですね。というわけで、今日は久しぶりに、レコードの話でも。

キャンディ+1
タイトル  :CANDY
アーティスト:Lee Morgan

冒頭は表題曲"CANDY"。とても明るくポップな感じのテーマに惹かれます。リー・モーガンのトランペットが奏でるメインテーマは、ちょっと可愛らしい感じ。子供の少しはにかんだ笑顔のような雰囲気、とでも言いましょうか。冒頭のワンフレーズで「あ、いいな。」と思わせる魅力がありますね。ソニー・クラークのピアノも実に軽やかで、曲の雰囲気を盛り上げてくれます。

続く"SINCE I FEEL FOR YOU"は転じて、とても大人っぽいスローな一曲です。冒頭はどこかスモークのかかった、景色に喩えるなら夜霧に霞む夜景のような印象。主旋律が始まると暖かみが加わり、さらにピアノに引き継がれると、明るさが加わります。暗い夜道から灯りを消した屋内へ、そして灯りを点けて・・・というイメージを想像しながら聴くと、ピッタリかもしれません。ソファに体を沈めて、ゆったりと聴きたい一曲ですね。

"C.T.A."は再び活発な印象。アップテンポである事もあいまって、活発さと言う意味では一曲目よりさらに動いている感じ。どこか舞台的なとでも言いましょうか、何かのショーのBGMのような印象です。群衆の歓声や拍手、笑い声といった賑やかさが似合いそうな曲でした。

B面一曲目の"ALL THE WAY"は、良く聴く曲ですね。ゆったりと落ち着いたメロディからは、冒頭の少しきらきらとした印象のピアノも手伝って、星空を見上げているようなイメージを想像させられます。モーガンのトランペットはこの主旋律を実に起伏豊かに演奏するのですが、それでいてねちっこくないのが良いですね。うっとりとした感じは充分に出しつつ、それでいて少し軽やかにしているのがとても良い感じです。

実はこの曲、フランク・シナトラ出演の映画の主題歌なのだそうで。映画の邦題は「抱擁」、原題は「ザ・ジョーカー・イズ・ワイルド」だそうです。言われてみれば実に映画音楽的な主旋律ですね。

"WHO DO YOU LOVE I HOPE"は、ちょっとおどけた感じの明るい一曲。ミュージカル的な印象だなぁと思ったら、やはりミュージカル音楽のジャズアレンジでした。こういった舞台音楽は、振りを付け易いという共通点があるのですよね。聴いていて、ラスベガスの舞台が浮かんで来るような独特の間合いと明るさは、この種の音楽に共通の特徴だと思います。ちなみにミュージカルの題名は「アニーよ銃を取れ」。

最後の一曲"PERSONALITY"も、どこかで聴いた事のあるメロディですね、しかも歌詞付きで。と思ったら、そういえば「東京ブギウギ」って節回しがこの曲にそっくりなのですけれど・・・というか似過ぎです。まぁ今も昔も邦楽には良くある事ですが。

とりあえず原曲はジミー・ヴァン・ヒューゼンで、この方はやはり映画音楽を、というかシナトラの曲を沢山作った方のようですね。古い映画ファンでこの方を知らなかったらモグリ・・・というくらいの偉大なメロディライターだったそうです。モーガンはこのメロディを、しなを作るような感じに演奏していて、古い映画の女優がポーズを決めている映像が目に浮かぶようです。

このアルバムは何度か復刻されている人気作のようですね。確かにどれも聴き易くて印象的なメロディラインを持った魅力的な曲ばかりですし、何より軽やかで爽やかなモーガンのトランペットがとても良い雰囲気で、何度でも聴きたくなります。

しかも、音がとても良いのですね。録音の良いモノラルとはそういうものですが、モノラルなのに何故か音がとても立体的なのです。それはもう、このアルバムのためにモノラルカートリッジを購入しても、多分後悔しないのでは・・・と思えるくらいに。リー・モーガンの魅力は勿論、モノラルの魅力をも存分に味わう事が出来る、とても素敵なアルバムでした。

THE SIDEWINDER

ふと気がつくと、最後にレコードがらみの記事を書いたのは、半月以上前の事なのですね。実はどういうわけか、あれ以来レコードを聴く機会がなく、それどころかアンプに灯を入れることさえ稀だったのです。どうしてそうなってしまったのかは分からないのですが、まぁ少なくとも、体調が優れない事が一因であったような気はしています。

あとは、ここしばらく外出出来ていないというのも一因ですね。ここ二週間は雪で潰れていますし、その前は多忙だったり体調が悪かったり。どうやら気分が憂鬱で内向きになってくると、私は音楽を聴かなくなるようです。いってみれば、どのくらい音楽を聴くかは、精神衛生のバロメータなのかも知れません。

そういえば、吉祥寺にはもうひと月近く行っていないと思います。とはいえ、聞こうと思えばレコードは沢山ある訳でして。気がついたら、買ったばかりのレコード用ボックスが一個埋まってしまいそうな勢いなのです。というわけで、今晩は久しぶりに、その中の一枚について感想など。

LINK
タイトル  :THE SIDEWINDER
アーティスト:Lee Morgan

帯の文句によれば、ブルーノート始まって以来のベストセラーを記録した、モーガン会心のヒット作・・・なのだそうです。そういわれるとなんだか派手な曲やキャッチーな曲を期待してしまうのですが、あにはからんや、表題曲の"THE SIDEWINDER"はどちらかといえば地味な曲でした。

リズムを取りながら肩を揺らして歩いているようなイメージの、ややゆったりめのリズム。シンプルな裏拍のピアノに乗せてトランペットやベースが時折ソロを繰り出す以外は、至極大人しくテーマの演奏が繰り返されます。この曲を使うなら、何かの作業シーンのBGMか、あるいはクイズの思考タイムのBGMといったところでしょうか。

初めて聞いた時は正直がっかりしたのですけど、改めて聴いてみるとこれはこれで。聴けば聴く程に味わいが出てくる、所謂スルメ系の名曲かも知れません。演奏時間はとても長く、これと次の"TOTEM POLE"だけでA面を使い切っています。

そのTOTEM POLEですが、こちらはほのかに妖しいややオリエンタルな雰囲気のテーマが印象的ですね。どこかで聴いた事があるなぁと思ったのですが、Lee Morganのオリジナル曲だそうです。でも絶対どこかで聞いたことがあるような・・・あるいは、レコード屋さんでBGMに流していたのかも知れませんが・・・いえ、このテーマはキャラバンと似ているのではないでしょうか。

B面一曲目は三拍子です。タイトルは"GARY'S NOTEBOOK"で、これもLee Morganのオリジナルのようですね。バーの賑わいが似合いそうな作品で、この曲もやはりBGM向きだと思います。派手な自己主張はありませんが、バリー・ハリスの奏でるピアノのソロが良い感じでした。ちょっと捻りの利いたリズムの取り方が好きですね。

"BOY WHAT A NIGHT"はお洒落なピアノで始まる、タイトル通り華やかな夜の街が似合いそうな一曲。この曲はリズムがとてもユニークで、なんと8分の12拍子なのだそうです。特に意識しなければテンポの速い3拍子のノリで聴けるのですが、確かに3拍が4つセットになってフレーズの節目になるあたり、なるほど12/8だなと。

メインテーマ以外の部分はトランペットの振る舞いがどことなく"THE SIDE WINDER"と似ている気がしますね、これはLee Morganの癖なのでしょうか。

最後の"HOCUS-POCUS"は、華やかなイメージのフォービートで、何かの番組のエンディングテーマに良さそうですね。ちょっぴりコミカルな冒頭のフレーズは実に分かり易くて、このアルバムの中では一番キャッチーなのではないでしょうか。ただこれといって癖の無いとても聴き易い曲なので、印象の強さという意味では他の曲に譲ります。途中でフェードアウトするような使い方をされそうな・・・とでも言いましょうか。

レコードを聴いたのは久々ですが、やっぱり良いものですね。半月程間が開いている筈なので、いわゆるバイアス無しでの音の評価ができているだろうと思うのですが、パッと聴いて「あぁ良い音だ」と、掛け値無しに思いました。

それにしてもこのアルバムが、ブルーノート始まって以来のヒット作というのには驚かされます。というのも、どの曲もどちらかと言えば地味で、BGMに使ったり、あるいはくつろぎながら聴いたりするのによさそうな、おとなしめの作品ばかりでしたから。

ヒットアルバムと言うと大抵こう、ぐぐっと掴んで来るような強烈な印象を残す曲が入っているものですけれど、このアルバムにはそれがありません。そういうありがちな先入観を持って聴くと、ちょっと肩すかしを食らったような気分になるでしょう。

初めてこのアルバムを聴いた時の印象は、なんだかパッとしないアルバムだなぁというもので、あまり良くありませんでした。ところがこうして改めて聴いてみると、別に全然悪くないですね。派手な何かを期待するから物足りないのであって、そういう前提が無ければ普通に聴き易いアルバムです。逆に、派手さや覚え易さが無い分、長く楽しめるアルバムなのかも知れません。

これを高く評価出来るアメリカの消費者の音楽センスがちょっと羨ましく思えます。日本もそうであったなら、なんて、無い物ねだりしても仕方ないのですけれど。


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