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日々の便り

 

紙の博物館

三連休の最終日、本日も東京は気持ちの良い青空が広がり、気温も高く過ごし易い一日でした・・・花粉症の人以外は。そう、こんな素晴らしいお天気ですから、花粉の方もそれはもう猛烈で。そろそろシーズンが始まったばかりのコナラもかなり張り切ってくれたようで、私は朝からマスクを手放す事ができませんでした。

とはいえ、折角のよいお天気です。これで出掛けないという選択肢は有り得ません。気合いを入れて花粉対策をした私は、かねてから行ってみたいと思っていた、北区は飛鳥山にある博物館に行って来ました。

地下鉄東西線は西ケ谷駅を下り、二番出口から左手方向へ進むと、5〜7分程度歩いた辺りで右手に見えてくる緑地が、飛鳥山公園。ここは花見の名所としても知られる場所で、シーズンにはそれはもう大勢の人が訪れます。今年も既に花見の準備が始まっているようで、公園内には既にぼんぼりや仮設トイレの設置が進んでいました。そんな飛鳥山公園の一角に立ち並ぶのは、三つの博物館。中でも特に「紙の博物館」が今日の主な目的です。

入口の看板
入口の看板 posted by (C)circias

紙の博物館は、戦後に王子製紙が焼け残った発電施設に開いた資料館が始まりで、紙の博物館という名前になったのは1965年の事なのだとか。歴史ある博物館ですが、建物の方はリニューアルされ、きれいな近代建築となっています。紙の博物館について詳しくは、こちらのHPをどうぞ。

紙の博物館ホームページ

次の写真は、紙の博物館の玄関の様子。写真が傾いて見えますが、傾いているのは建物の屋根や自動ドアの方です。なんだかちょっと複雑というか、前後左右に微妙な傾斜をつけた建物なので、正面からだと写真に収めにくいですね。感覚を狂わされる騙し絵のような、実に凝ったデザインです。ちなみにこの玄関、建物の二階にあったりします。この建物は斜面に建っているため、公園側に面している入口は二階なのですね。

紙の博物館・玄関
紙の博物館・玄関 posted by (C)circias

博物館に入ると、すぐ右手に券売機がありますので、そこで入場券を購入します。ただ、これに気付かないお客さんも多いようで、そのまま受付まで進んでしまった場合、受付で券を購入する事もできるようです。入館料は¥300と安め。三館共通券の場合は¥720で、私はこちらを購入しました。えぇ、そうです、受付で。

紙の博物館は基本的に撮影可とのことでしたので、カメラとメモを用意して中へ。まず最初のフロア(二階)には製紙機の模型や、紙の原料、製紙の方法についての解説が展示されていました。中でも特に興味深かったのは、紙の原料についての展示です。なにかと環境屋さんの槍玉に挙げられる事の多い日本の製紙業ですが、その原料の内訳は次の写真の通りなのだそうで。なんというか、正義屋さんの不都合な真実がまた明らかになったという感じですね。

日本の紙原料の割合
日本の紙原料の割合 posted by (C)circias

古紙リサイクル率64%強の日本は、世界でもリサイクル率が高い方です。最も古紙利用率が高いのは、意外にも中国。そして古紙の再利用率がワーストなのはアメリカで、たったの38%弱でした。うん、自分たちで絶滅の淵に追い込んだクジラ相手にマッチポンプしてドヤ顔している暇があったら、リサイクルをもっと推進した方が良いと思いますよ、ハリウッドにおいでのヒューマニスト(笑)の皆さん。

自己アピールの痛い人達の話はさておき、この階の展示は「紙とは何か」を理解する上で、たいへん役に立ちます。それがどのような材料で、どのような工程で、どんな用途のために、どのくらい作られているのか。そういった情報が分かり易くまとめられているのですね。私は展示を見ながら、メモを取る手が止まらなかったくらいです。

次に印象的だったのは、三階の入口付近にあった、紙のサンプル。「和紙」や「サトウキビから作った紙」などを実際に触って、その性質の違いを確認する事ができるのです。そして何より衝撃的だったのが「象糞紙」。像の糞から作った紙でした。これがなかなかどうして、滑らかで質の良い紙でして・・・まぁ確かに、象をはじめとする草食動物って、天然のパルプ製造機ですからねぇ。確かに紙を作れます、あまり気分は良くないですが。

そして四階に進むと、特設展示があります。今回は「紙布」という、和紙のこよりを織って作る布の特集をやっていました。そしてそのコーナーを通過すると、再び常設展示があります。このフロアでは主に、製紙技術の歴史や昔の紙の利用法などを扱っているようですね。まず目をひくのは、最初期の紙漉き機の模型でしょう。

初期の抄紙機の模型
初期の抄紙機の模型 posted by (C)circias

ここで二階の展示内容を覚えていると、この紙漉き機が近代的工場のどこからどこまでの工程を担うのかが分かったりして、面白いのですね。この並びには、西洋式の紙漉きに用いられる金属製の網などといった道具も展示されていました。それぞれの解説も実に興味深く、通り一遍の知識で知った気になっていた「紙漉き」についての、意外な事実を知ることができます。

またこの階には、洋紙や和紙以外の様々な紙のサンプルも展示されています。幾つか写真を撮ってきましたので、順にご紹介しましょう。まずは歴史の教科書ではお馴染みのパピルス紙。

パピルス紙
パピルス紙 posted by (C)circias

そして次は、ファンタジーものではお約束の皮革紙。動物の皮をなめして紙として利用したものですが、中でも特に有名なのが「羊皮紙」ですね。実際には羊だけが用いられた訳ではないのですが、似非中世的世界観で登場する紙と言えば、羊皮紙で決まりです。ちなみに次の写真は、これで「楽譜」なのだそうで。何が書いてあるのかサッパリですが。

羊皮紙
羊皮紙 posted by (C)circias

そして最後は、植物の樹皮を叩いてなめし、紙の代わりとした樹皮紙です。もともとは南洋のポリネシアなどでタパという「布」として利用されていた素材ですが、それがマヤやアステカに伝わって「紙」として利用されるようになったのだとか。彼等はこれを「アマテ」と呼んでいたそうです。これも、案外知られていない事実ですね。舞台が南米風でも、フィクションの世界に樹皮紙が出て来る事なんて、まずありませんからねぇ。

樹皮紙
樹皮紙 posted by (C)circias

この他にも、透かしの技術についてや、日本各地の「和紙」の性質の違いなど、それはもう興味深い知識が盛りだくさんで。建物自体はそれほど大きくはないのですが、その内容は実に濃く、気がつけば一時間以上も留まってしまいました。これだけの知識と体験をたった¥300で得られるというのは、なんというかとても太っ腹だと思います。

あって当たり前、知ってるつもりの紙についてのあれこれですが、実は案外知らない、分かっていない。そのことをよく理解させられた、目から鱗の体験でした。もし何がしかの作品の中で紙を扱うつもりならば、この博物館に一度は足を運んでおくことをお勧めしたいと思います。


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