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日々の便り

 

オオミズアオと紋白蝶

気がつくと、もう5月も終わりなのですね。今月は連休をすっかり無駄にしてしまったこともあり、なんだかいつも以上に一ヶ月過ごした実感というものがありません。思えば左右の奥歯が割れたり謎の鼻血を連日出したりで、トラブルだけはいつも以上に色々とあった一ヶ月ではありましたが。左右の奥歯を失った状態で過ごした連休なんて、後にも先にもこれっきりでしょう。というか、二度と御免です。

そんなこともあって4月以上に無気力の沼底に沈んでいた私でしたが、ここへきてようやく浮上の兆しが見えて来ました。まずは、左の奥歯の治療がようやく終わり、再びまともにものを噛めるようになったこと。もう一つは、花粉症由来と思われる鼻炎の発作的反応が、河原や山上では全く起こらない事が分かったこと。御陰で休日に家に籠っている理由も無くなり、晴れて憂いなくいつもの活動を出来るようになったからです。

というわけで例によって河原を歩いて来た訳ですが、この時期の河原にはあまり蝶が居ません。連休中はまだアブラナ系の草花が咲いていたのでシャッターチャンスを期待出来たのですが、この時期はあらかた枯れてしまっていて、これといって花がないのですよね。これは望み薄かと思っていたのですが、思いがけないものを見る事が出来ました。

背面
背面 posted by (C)circias

上の写真は、ご存知、オオミズアオ。森の中や自宅の庭で見た事はありますが、河原で見たのはこれが初めてですね。夜行性なので、恐らくここで夜が来るのを待っているのでしょう。なにぶん巨大な蛾ですので、苦手な方もいらっしゃるかも知れませんが、人間には全く無害でとても大人しい種なのです。毛嫌いしないでやって頂けないものかと。一応、最も美しい蛾なんて言われる事もあるくらいの逸材ですし。

裏側
裏側 posted by (C)circias

羽の表は水浅葱に近い青みがかった黄緑色ですが、裏側から見るとだいぶ白っぽい色合いになります。胴体は目映いほどの純白で、足は赤。羽には縁部付近に波形のラインと、中央に眼状紋が入るのが特徴です。次の写真は、大人しいのを良い事に羽を接写したもの。眼状紋周辺をアップで写してみました。蝶とは異なり、オオミズアオの羽にはびっしりと毛が生えているのが分かります。これは鱗粉の色ではなく、毛の色なんですね。

眼状紋
眼状紋 posted by (C)circias

勿論、毛深いのは羽だけではありません。次の写真はオオミズアオの胴体のアップですが、見ての通りふわっふわのモッコモコ。全身くまなく純白の毛で覆われていました。非常に手触りが良さそうなのですが・・・さすがに触ると逃げるので、ここは接写のみで我慢。なお、そもそも触りたいとか思わない、という突っ込みはご遠慮下さい。色々自覚はありますので、大丈夫です。

胴体をアップ
胴体をアップ posted by (C)circias

この輝かんばかりの白は、どうやらモンシロチョウを引き寄せてしまうようです。撮影をしていたところ、一匹のモンシロチョウが寄って来て、執拗にアピールを始めました。次の写真は、オオミズアオにアタックするモンシロチョウのオスの様子です。

モンシロチョウに絡まれる(1)
モンシロチョウに絡まれる(1) posted by (C)circias

最初は偶然飛来しただけかと思っていたのですが、これが執拗に絡む絡む。数分間周囲を飛び回り、終いには胴体に着陸までかましていました。次の写真は、まさに胴体にしがみつこうとした瞬間を捉えたものです。モンシロチョウの方は必死だったのですが、当然ながら足蹴にされて追い払われてしまいました。

モンシロチョウに絡まれる(2)
モンシロチョウに絡まれる(2) posted by (C)circias

それにしても、これほど明らかに違う種だと言うのに、このモンシロチョウは何を勘違いして寄って来たのでしょうね。もしかして、オオミズアオの方がフェロモンかなにかを出していたのでしょうか。モンシロチョウは間違いなく求愛のアピールを行っていましたから、相手を同種のメスと誤認していたのは間違いないでしょう。もしかすると、フェロモンと色さえ合っていれば、モンシロチョウは何にでも寄って行くのかも知れません。

オオミズアオも紋白蝶もさほど珍しいものではありませんが、この組み合わせは全くもって意外でした。オオミズアオに求愛する紋白蝶なんて、そうそうお目にかかれるものではないでしょう。この日の私は、ちょっとついていたと言っても良いと思います。

セスジスズメ

昨日の事、頑張った割には成果を出せず、しょんぼり帰宅した私を出迎えてくれたのは、見た事の無い大きな蛾でした。まぁ見た事はないと言っても、「実物は」見た事がないというだけで、例によって図鑑からの知識はあったのですけれどね。その蛾と言うのがこちら、セスジスズメです。

セスジスズメ(1)
セスジスズメ(1) posted by (C)circias

ちょっとお洒落なストライプの、かなり変わった形の蛾です。体長は4cmくらいありますので、大型の部類に入るのではないでしょうか。スズメ蛾の類いに毒持ちは居ませんので、当然この子も無害です。幼虫も芋虫型で、触れても問題ありません。まぁそもそも幼虫は見た目がアレですし、触ろうとすると身をよじって抵抗しますので、よほど物好きでなければ触ることはないでしょうけれど。

ちなみに食草は主に芋系を好み、極めて旺盛な食欲を持つため、農家にとっては恐るべき害虫でもあります。時折河川沿いの道路で見掛ける、黒くて大きくて目玉模様の沢山ついた、不気味な芋虫の成長後がこれですね。かなり大型のぶりぶりした芋虫なので、見ただけでも悲鳴を上げたくなる方も多いのでは・・・というわけで、幼虫の写真は載せないでおきましょう。

セスジスズメ(2)
セスジスズメ(2) posted by (C)circias

とはいえ、成虫はこのとおりのお洒落さん。上の写真は羽のアップですが、レンズがこんなに近付いても動かない、大人しい性格の蛾なのです。この模様は恐らく木目かなにかの擬態なのでしょうね、じっと動かずに敵をやり過ごそうとするため、指をギリギリまで近付けても動こうとしません。

とはいえこの位置に居られるとドアを開けられないので、頭をつついてどかしました。さすがに直接触れると飛び立つのですが、どうやらこの蛾は、あまり飛ぶのは得意ではないようですね。必死に羽ばたく割にはふらふらと飛び、すぐにふわりと着陸してしまいます。

セスジスズメ(3)
セスジスズメ(3) posted by (C)circias

というわけで、着陸後。3mくらい飛んだだけで、地面に降りてしまいました。この状態で羽を振り続けているのは、もしかしたら威嚇なのかもしれません。まぁ人間はそうと分かっていても敢えて無視する、迷惑極まりない生き物なのです。というわけで、この状態でもしばし撮影を。

それにしても、この蛾は変わった形をしていますね。矢印形のシルエットもそうですが、この頭の大半を覆っている巨大な目も特徴的な部分です。そして、この変な形の棒状の触覚も、いわゆる「蛾」というもののイメージとはかけ離れていると言っても良いでしょう。

セスジスズメ(4)
セスジスズメ(4) posted by (C)circias

この写真は、近くの鉢植えに逃げ込んだ様子。ジェット推進なら速そうなノーズ形状ですが、羽ばたく場合は特に優位性は無いようで。むしろこの変な形の羽が災いして、飛び方は不器用なのですから、おかしなものです。

スズメ蛾の仲間には、オオスカシバをはじめとする蜂雀(ホウジャク)の類いのように、極めて巧みに飛ぶ種も居るのですが。胴体の形や極端に大きな目、棍棒状の触覚という特徴は似通っているものの、羽の形が種によって結構違うようです。飛ぶのが上手い種は、やはり飛び易そうな羽をしているから面白いですね。

セスジスズメは、幼虫には触った事がありましたが、成虫に触れるのは今回が初めてでした。まぁ、あまり感触が分かるほどしっかりとは触れさせてもらえませんでしたけど、ちょっと良い体験をした気分・・・などと言ったらおかしいでしょうか。はい、おかしいですね。家族からもどん引きされますし、自覚はしていますとも。

オオミズアオ

今日は昼前からいつもの植物園へ出掛けたのですが、どういうわけか今日は蝶を見掛けません。代わりに、薔薇フェスタから流れて来たと思しき観光客ばかりわんさかいるので、早々に諦めて野川公園の方へ移動しました。この時期、「整備」さえ入らなければ、むしろ河原の方が期待出来るからです。

時刻は14時頃、ついでに遅めの昼食も済ませてしまおうとコンビニでオニギリを購入し、公園へ。本来の目的地は隣の自然観察園なのですが、その前にベンチで食事を済ませてしまおうと思ったのです。木陰のベンチを求めて、売店前から賑わうバーベキュー広場を通過。観光客を縫うようにしてテニスコート脇に差しかかったところで、道の脇の木に妙なシルエットを見付けたのでした。

オオミズアオ(1)
オオミズアオ(1) posted by (C)circias

その名はオオミズアオ。ヤママユ蛾の仲間で、幼虫は桜の葉を食べます。成虫になると口が退化してしまうので、羽化した後は飲まず喰わずという、なんというか儚い蛾です。とはいえその見た目は堂々たるもので、その前翅は一枚8cm〜12cm。写真を見てもお分かり頂ける通り、ジャコウアゲハなみの大きさを誇る蛾なのです。苦手な人が見たら卒倒するかもしれません。

オオミズアオ(2)
オオミズアオ(2) posted by (C)circias

この写真の個体は、後翅がまだ伸び切っていないようですね。もしかすると、まだ羽化したばかりなのかも知れません。羽の緑色も実に鮮やかで、まだ新しい羽のように見えますし。ちなみに、羽の前縁のラインは黒く見えますが、実は焦げ茶と茶色の二本の線で出来ているのです。しかも足は生々しい赤色。なんとも美しいカラーリングの蛾でした。

実は以前、オオミズアオの成虫に、夜間に遭遇した事があったのですよね。我が家にも桜がありますので、恐らくそれを食べて育ったか、さもなくば卵でも産みにきたのでしょう。ただその時は灯りが無かったので、この蛾の本来の色彩は分からずじまいでした。

改めて太陽光の下で見てみると、実に奇麗な緑色です。こんな奇麗な色の蛾は、恐らく日本には他に居ないでしょう。何かの本で、最も美しい蛾であるという主張を目にした事がありましたが、なるほどこれは頷けます。

そうそう、私が写真を撮っている後ろで、後からやって来た米兵さん親子が「Oh! morpho!」と騒いでいましたが、アメリカでは鱗翅目全般をmorphoと呼ぶのでしょうか。あるいは、大型の鱗翅目は皆morphoなのかも知れませんね。さすがにモルフォチョウ属と間違えているという事はなさそうですし。

ちなみにこれは蛾ですが、西洋では蛾と蝶をあまり区別しないという話は、どうやら本当のようです。こういう言葉の使い方は辞書を引いても出て来ませんので、調べても分からないのが困りますね。しかし、実地で使われている英語の意味が分からない辞書というのも、いかがなものかと。

ときに、この写真はM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影しています。なにぶん暗い場所での撮影でしたので、40-150mmでは暗過ぎて、シャッター速度がかなり厳しい事になってしまったので。撮影してみて感じたのですが、やはりこのレンズの描写力は凄いです。そして、色が妙に奇麗に出ますね。艶かしい色になるといいますか。やはりこのレンズ、なかなか良いもののようです。買っておいて正解でした。

桜と蛾

あれは先週の土曜日のこと、確か17時過ぎくらいの時間だったと思います。植物園の帰りに野川公園に立ち寄った私は、東八道路沿いの桜並木に無数の鱗翅目が集まってくるという、ちょっと幻想的な光景を目にしました。飛んでいたのは種類の分からない白い鱗翅目で、飛び方は蝶のように見えます。

次の写真は、いつもの40-150mmで撮影した一枚。桜の葉に、何か白い虫が飛んで来るのが写っていますね。写真ではこんな感じに見えますが、肉眼では羽しか見えませんので、この時点ではこれが何なのか、分かりませんでした。

P5240134
P5240134 posted by (C)circias

次から次へと飛んでくるそれらの虫達をなんとか写真に収めようと奮闘する事しばし。いつのまにやらあたりもだいぶ暗くなり始めた頃、偶然にも、近くの葉の裏に虫達のうちの一匹が潜り込むところを見付けたのです。そうして撮影出来たのがこちら。

P5240149
P5240149 posted by (C)circias

飛んでいると実に奇麗に見えるのですが、どう見てもこれは蛾です。拡大してみて初めて分かったのですが、蛾に特有の櫛のような触覚もきっちり写っていますので、これは蛾と見て間違いありません。しかしです、たまたまこれが蛾だっただけで、他のものは違ったりということも・・・。

P5240155
P5240155 posted by (C)circias

そう思って写真を撮り続けてみたのですが、結果はご覧の通り。なるほど、飛んでいる時の羽の形はジャノメチョウの類いに似ていますが、胸が妙に太く、そしてまるで棒のような腹。こういうフォルムの蝶はいません。これはもう、飛んでいたのは全部蛾だと考えて良いでしょう。

最初の印象があまりにファンタスティックだったので、この結果はちょっとがっかりでした。まぁ蛾だからって何か蝶より劣る訳ではないのですけれど、なんというかこう、ねぇ。文章に書いた場合でも、空一杯の白い蝶達の乱舞と書くのと、空一杯の白い蛾の乱舞と書くのでは、随分違うではありませんか。

とはいえ、蛾にしてはなかなか奇麗な類いのものである事は間違いありません。桜に集まるということは、恐らくは幼虫が桜を喰うのでしょう。というわけで「桜の蛾」とか「桜と蛾」で検索をかけてみたのですが、これといって該当するような資料が見当たらなかったのですよね。

あれこれ調べてみた結果、これは「キアシドクガ」という種類の蛾である事が分かりました。触覚と羽の特徴、腹の形、群れをなして桜に集まる事など、複数の条件が一致しています。桜に集まる白い蛾と言えばヒトリガの類いもあるのですが、あれは腹の形が違います。

ちなみに、キアシドクガは幼虫、成虫とも無毒なので、触っても大丈夫。蛾と言えば毒という迷信がはびこっていますけれど、実は毒のある蛾というのは、種類としてはかなりの少数派なのですよね。それでいて、美しいものの代表のように言われるアゲハに毒持ちが居たりするのですから、まったく人間の主観的な分類などあてにはなりません。

安全な種類の蛾と分かれば、その集まる様を見ても鳥肌が立つ事はないでしょう。そもそも蝶だと思って見た時は感激していた訳で、蛾だと分かった途端に幻滅するというのも随分な話です。やはり人間というのは、名前のイメージに左右され易い生き物なのですね。
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