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日々の便り

 

BUTTER CORN LADY再び

昨晩から、東京は雨。湿度は80%を超え、これ以上ないくらいにジメジメしています。こんな日は、さすがに私も遠出をしたいとは思えませんね。という訳で、今朝は早くからコーヒーを淹れ、久々に、本当に久々にレコードを引っ張り出して、朝から優雅な休日ごっこをしています。

昨年後半からだいぶ忙しく、レコードを聴くのも恐らく半年ぶり以上になるのではないかと思いますが、しかし、やはりレコードは良いものです。久々にアンプの接続を切り替え、ターンテーブルを起動し、ドキドキしながら恐る恐る針を落として・・・そして飛び出した鮮烈な音に、のっけからすっかり魅了されてしまいました。

「音質」を数値で語るなら、アナログレコードはハイレゾの足下にも及びません。そもそもダイナミックレンジが違うし、分解能が違うし、何より再生の段階での物理的な劣化が一切ない。レコードの音はダイナミックレンジは狭いし、混濁しているし、ターンテーブルの速度は物理的に揺らぐので、音程もテンポも不確かです。でも、なのに。この「ハッキリ」聞こえる音は、ぶわりと伝わるこの熱量のようなものは、一体何なのでしょうね。

気が遠くなる程高価なオーディオセットを理想的なスタジオに置いて、最高の再生装置でデジタル音源を再生すれば、きっとこんなチープな環境で、半ば自作品と化したオーディオで再生したアナログ音源など圧倒出来る音になるのでしょうけれど、そんな比較に意味はありません。レコードの凄いところは、今この環境で圧倒される音を出してくれるということ、その一点に尽きます。

ところで、実は昨年フォノイコライザを導入しまして、アナログ環境がかなり向上しました。その結果、これまで「耳が痛い」と感じていたレコードを聴いても耳が痛くなる事がなくなったのみならず、これまで音が悪いと思っていたレコードが軒並み「高音質」に化けてしまったのです。これは本当に驚きました。そんな訳で、以来頻繁に聴いている盤があるのですが・・・それがこちら、アートブレイキーの「Butter Corn Lady」です。

LINK
タイトル  :BUTTERCORN LADY
アーティスト:Art Blakey & New Jazz Messengers

ペラッペラのいかにも音質に期待出来なそうなビニールで、まぁ音質は良いとはいえないのですが、しかし。何度聴いてもこれが良いのですよね。具体的に何が良いのかと言われると困るのですけれど、何でしょう、聴いているとワクワクするのです。

一曲目の表題曲、「Butter Corn Lady」のキャッチーさは、思わず口ずさんでしまうほどですし、どこか少し調子っぱずれな感じのトランペットがまた良い。キース・ジャレットのピアノは、以前聴いた時はそれほど良いと思わなかったのですけれど、それはフォノイコライザが悪かったせい。少々まともな再生環境に換えてみれば、びっくりするほど表情豊かで、楽しい曲をさらに楽しくしてくれます。

一曲目の冒頭から「あぁ、いいなぁ」と。楽しい気分は三曲目の「THE THEME」で最高潮に。この曲は色々な盤に収められているのですけれど、この盤のは楽しさが際立っていますね。冒頭の賑やかな雰囲気がもう、好きで好きで。

それともう一つ、言わずにはいられない事が。このレコード、聴衆の歓声や拍手の入るタイミングが絶妙なのです。多分「分かっている」聴衆なのでしょう。歌舞伎などでも、観客が屋号を叫んだりするのにはタイミングがあり、良く訓練された(笑)客でないとタイミングを掴むのが難しいと言いますが、それはJAZZも同じ事。

大興奮の熱狂ではなく、いかにも小規模のライブ的なまばらな拍手や歓声が、かえって録音の生々しさを際立たせています。演奏者との距離の近さを感じさせるとでも言いましょうか、これがまた魅力的なのです。

ところでこのレコード、アートブレイキーの人気が低迷して、メンバーもどんどん入れ替わっていた時代のものだそうで。その関係でか、この盤を評価する声はあまり聴きませんし、高音質のリバイバル盤がリリースされたりという事もないようです。専門家的な評価基準からすると、あまり価値のないレコードという事になるのでしょうか。

でも、この若々しくて勢いに溢れていて、思わず肩を揺らしてリズムを取りたくなるような雰囲気は、ただ高度なだけの演奏にはなかなかないものだと思うのですよ。そして、ジャズやロックの一番の魅力は、まさにこれなのではないかなと。だからこそ、ライブ盤に勝るものはないと言われるのではないでしょうか。

願わくはいつかこのレコードが再評価されて、高音質版がリリースされますように。まぁ無理なのでしょうけれど・・・いっそ、無くならないうちにもう一枚確保しておいた方が良いかも知れませんねぇ。


THE RUMPROLLER

今日の東京は、晴れ2割曇り8割という感じの、なんともハッキリとしない天気でした。気温の方も昨日に引き続き4月並みだったようで、長袖でないと寒いくらいでしたね。まったく、5月から7月の陽気だったというのに、6月に入った途端4月の陽気とか、一体どうなっているのでしょう。まぁ愚痴ったところで始まらない事ではありますけれど。

天気の方がそんな有様でしたから、今日は歯医者に行った以外、これといって何もない一日でした。一応野川へは行ったのですけれど、何しろ天気が天気でしたし、これといって珍しいものも見ませんでしたし。強いて何かした事を挙げるとするならば、帰りにダイソーで細々と仕入れて、部屋を少し整理したり服を修理したりしたことくらいでしょうか。

そんなわけでこれといって書く事もなく、どうしたものかと考えていたところ、ふとレコードプレーヤが目に留まりました。そういえば、ここ二ヶ月ほど音楽を聴いていませんでしたね。なにかと精神的にも体力的にもギリギリの毎日だったので、すっかりご無沙汰になってしまっていました。

音楽自体は大好きなのですけれど、音楽を聴くと体力を消耗するので、バテていると駄目なのですよね。最近はテレビの音も辛いので、人工的な音のある場所からは、逃げるようにしていたくらいです。でも、今日は何もしませんでしたし、体力は余裕。ならば久々に一枚聴いてみようという訳で、このアルバムをかけてみました。


The Rumproller
タイトル  :THE RUMPROLLER
アーティスト:LEE MORGAN

レコードを取り出してみてまず思うのは、収録時間が短いな、ということ。大抵のLPはかなり内側まで溝を切ってあるものですが、このアルバムは両面とも1/3くらいは盤面を余らせています。収録曲数はA面が2曲、B面が3曲。A面の2曲は少々長めなので、時間が半端になってしまったのかも知れませんね。

一曲目は表題曲の「THE RUMPROLLER」。速歩きくらいのペースで淡々と刻む煌びやかなピアノの伴奏の上で、トランペットが奔放に動き回るタイプの曲です。序盤はちょっと「ちょい悪(死語)」という雰囲気がありますが、それ以外の部分はむしろ明るめのお洒落な感じとでも言いましょうか。市内循環バスのようなペースの遅い乗り物に乗って、賑わう市内をずっと眺めているようなイメージの曲です。

ただ、曲が始まってまず感じるのは違和感でした。これまで聴いて来たリー・モーガンの作品はどれも音が非常に伸びていて力強く、一切迷いなしに突っ走っているような若々しい印象だったのですけれど、この作品ではそんな慣れ親しんだモーガンの音が鳴りを潜めています。リズムもなんというか、「スパッ」とジャストなタイミングにこないことがままあり、どことなく煮え切らないのですよね。

何度も聴いていると慣れてしまうので次第に違和感を感じなくなりますが、例えば「CANDY」を聴いた後でこのアルバムを聴いたなら、その印象のあまりの違いに驚かれるに違いありません。そのくらい音に勢いがないというか、何かを確認しながら微調整を繰り返しているかのような印象を受ける音でした。

二曲目の「DESERT MOONLIGHT」はそのタイトルから連想される通り、ややオリエンタルな雰囲気の漂うメインテーマが印象的な曲です。序盤は静かに控えめに、深夜の静けさを思わせるような感じで。強弱の差の大きな曲ですが、弱いところの音が、やはりなんというか落ち着きません。しかし展開していつものジャズ風味のフレーズが表れると、音が安定して聴き易くなります。

ところで、この哀愁漂うメインテーマの部分は、なんと日本人の作った童謡なのだそうです。作詞は加藤まさを氏、作曲は佐々木すぐる氏で、大正期の作品なのだとか。これをリー・モーガンがジャズ化した訳ですが、何故かクレジットは彼のものになっていますね。一体どういう経緯で彼がこの曲を知ったのか、そのあたりのエピソードが気になるところです。

B面一曲目は「ECLIPSO」。ソシアルダンスに使えそうな、明るくリズミカルな一曲です。この南米風のリズムはサンバでしょうか。忙しく動き回る主旋律の熱気は、明るく乾いた景色を連想させます。日干し煉瓦やサボテン、コバルトブルーの明るい空が似合いそうな作品でした。この曲は、リー・モーガンのオリジナルのようですね。

続く「EDDA」は躍動感溢れるアップテンポな一曲。テンポはかなり速い作品ですが、疾走感ではなく躍動感になっているのは、三拍子の御陰でしょう。ゆらりゆらりという三拍子独特のリズム感が、ジャズ独特のスウィングによってさらに強化され、心地良い踏み込みの加速感を与えてくれます。この曲はピアノが都会的な雰囲気を醸し出していますね。近代的な都会の風景(但しアメリカの)が似合いそうです。

最後は「THE LADY」。甲高いミュートトランペットの音色で始まりますが、これがなかなか良い音色で。優しく穏やかに、それでいて芯のある演奏になっていて、これまでのどこか戸惑ったような音色とはひと味違います。曲はタイトルからも連想される通りのスローなバラードで、例によって灯りを落とした部屋や、高層階から見下ろす夜景が似合いそうな雰囲気。ゆったりと寛ぎつつ聴きたい一曲です。

全体を通して聴いてみると、A面よりもB面の方が印象が良いですね。メロディ等々はどの曲も素晴らしいので、この当初のモーガンとはだいぶ違う音色さえ気にならなければ、かなりお勧めできる一枚だと思います。実は私はこの音色がかなり気になってしまって、買った当初は最後まで聴く事ができずにA面の途中で止めてしまったのですけど。ただ、改めて聴いてみると、そんなに酷評するほどには悪くないと思うのです。

やはり先入観付きで聴く場合と、ある程度それがリセットされた後で聴く場合とでは、印象が大きく異なるものですね。これまでも何枚かこういうイメージの変化を経験したアルバムはありましたが、そんなアルバムがまた一枚増えました。やはり今でもA面の音は気になってしまいますが、それでもたまに聴いても良いかなと思うくらいに、曲が良いアルバムだと思います。

IN MY PRIME Vol.2

今日の東京は、なんとも残念なお天気でした。雨が降ったり止んだりで、その強さもまちまち。バケツをひっくり返したかのような豪雨の時もあれば霧雨もあり、そうかと思うと強い風が吹いたりもします。これでは出掛けても仕方が無いので、今日はほとんどの時間を掃除などの雑用で過ごしてしまいました。

というわけで、驚くほど話題の無い一日だったのですけれど、雑用ついでに買い貯めていたレコードを全部洗いましたので、さっそく一枚聴きながら感想でも書いてみようかと思います。

イン・マイ・プライムII
タイトル  :IN MY PRIME Vol.2
アーティスト:Art Blakey & Jazz Messengers

上のイメージは、このアルバムのCDのもの。手元のアルバムは粗末な二色刷りのペラペラのジャケットで、アートブレイキーの肖像が線画で入れられています。これはオランダはTimeless Recordsのアルバムで、ステレオ盤のようですね。以前聴いたモノラル盤の"Oh By The Way"が素晴らしい音質だったので、この会社には期待しているのですが、果たして。

一曲めの"Lift Every Voice And Sing"は、少しゆったりめのバラードです。冒頭のピアノが奏でるメインテーマは「閉会」または「エンディング」という感じの、ちょっぴり黄昏れた雰囲気がありますね。この一曲目は導入のような扱いで、そのまま二曲目の"Free For All"に雪崩れ込みます。

以前聴いた時にはその圧倒的なエネルギーに惚れ込んだ"Free For All"でしたが、この録音はそれと比べると非常に軽い気がしますね。もしかするとテンポも速いかもしれませんが、それ以上にあまり腹にこない演奏といいましょうか。まず低音部が軽いですし、ピアノも金管もあまり抑揚が無いのですよね。なんだかスタイリッシュに流し運転しているような感じの演奏でした。

三曲目の"Hawkman"は、やはり冒頭のフレーズが雰囲気があって良いですね。イントロが終わると、少しフュージョンに近いような近代的な雰囲気の、都市的なイメージの曲に変化します。冒頭が陰影の深い、どことなく民族音楽的なエッセンスを感じるフレーズだっただけに、この展開は少し意外でした。

四曲目の"People Who Laugh"は、イントロのパーカッションがちょっと独特。曲そのものは大都会の夜景を思わせるような雰囲気で、タイトルからはおよそ想像もつかないような格好良い曲です。恐らくおどけた感じを出そうとしたのでしょうけれど、冒頭の演出だけちょっと浮いた感じがしますね。

4曲も収めているA面に対して、B面は二曲。いずれも8分以上ある長い作品です。一曲めは"Time Will Tell"。冒頭は、深夜の幹線道路沿いのようなイメージですね。暗闇の中に転々と灯りが続いていて、時折自動車の走行音が聞こえて来るような。この雰囲気は展開してからも続いていきますが、この雰囲気を土台として様々なイメージがオーバーレイされていきます。

タイトルの「Time will tell」は直訳すれば「時が語るだろう」となりますが、意訳すると「いずれ分かる」とか、「時が教えてくれるだろう」という感じになるのでしょうか。夜の幹線道路を延々とドライブしているようなイメージですが、曲の世界はやがてイントロの直後に現れた華やかな景色に戻り、そしてエンディングを迎えます。

最後の"Ronnie's a Dynamite Lady"はいかにもショーっぽい感じの、せわしなくてエネルギッシュで、それでいてどこかモダンな都市のイメージを感じさせる、泥臭さの無い賑やかな一曲です。賑やかだけど熱くない、とでもいいましょうか。舞台の見せ物のようなイメージなのですよね。

A面のやや物足りない感じと比べると、B面は聴いて良かったと思える内容でした。特に"Time Will Tell"は好きですね。ただこのアルバムは録音がいまひとつで、音に力が全然こもっていないのが残念でした。最も顕著に感じるのはキックドラムのモコモコっぷりですが、それ以外の部分もなにか物足りません。籠っているとかスカキンだとか、そういうイコライザで調整出来るような物足りなさではないのですよね。抑揚が足りないのです。

以前Timeless Recordsの"Oh By The Way"を聴いた時は、音質に感激したものでしたが・・・そういえば、あれはモノラルでした。もしかすると、Timelessのステレオ盤はあまり期待出来ないと考えても良いのかも知れませんね。モノラルとステレオではかなりの違いがありますから、エンジニアや設備が対応できなかったのだとしても、不思議はないでしょう。

なかなかどうして、ステレオ盤でBlue Noteに匹敵し得るレーベルというのはないものですねぇ。国内レーベルが絶望的なのはもう基本設定として受け入れるとしても、海外物でもなかなか良いものを見付けるのは難しいようです。もうモダンジャズはBlue Note一択でいくというのもアリかも知れませんね。


OUR MAN IN PARIS

今日の東京はなにやら雨が降ったり止んだりで、どうにもはっきりしない天気です。少しの間晴れたかと思うと、急に強い通り雨が降ったりするのですよね。その僅かな晴れ間の間に髪を切りに行ったりしましたが、それ以外の時間は諦めて家でだらだらと過ごしています。

15時頃は、そこらにむわっとした重い空気が満ちていたのですが、先程一雨来てからは随分涼しい風が吹くようになりました。これがいわゆる前線という奴でしょうか。明日も荒れるという事ですし、今週はどうやら外出は無理そうですね。まぁ、外出を諦めれば諦めたで、屋内でもやることは幾らでもあるのですけど。

というわけで先程から、一週間ぶりのレコードを楽しんでいます。このところ晩の時間は寝落ちてばかりなので、どうにもオーディオを使う機会が減ってしまって。それで埋め合わせとばかりに、週末には活躍して貰っているのです。そして最近はまっているのが、こちらのアルバム。Dexter Gordonの名盤、Our Man In Parisです。

Our Man in Paris
タイトル  :Our Man in Paris
アーティスト:Dexter Gordon

一曲めはScrapple from The Apple。ちょっとおどけた感じで始まる、アップテンポな楽しい曲です。何度も登場する冒頭のフレーズはかなり動きが激しいのですが、このフレーズをカッチリとした音程で実に歯切れよく演奏しているのが素晴らしいですね。とても聞き易いのでサラっと聞き流してしまう部分ではあるのですが、このフレーズが嫌味にならないというのは地味に凄い事なのでは。

二曲目のWillow Weep for Meは、のったりと気怠げな印象のスローな一曲。一曲めがディナータイムで賑わう繁華街なら、こちらは昼下がりの寂れた街角のような感じ、とでも言いましょうか。ジャズという事もあってか、あまり「長閑」という感じはしないのですが、じつにもったりとリラックスした感じで、店主がカウンターで居眠りしている絵などが合いそうです。

B面一曲目のBroadwayは、もうタイトルが全てを説明してくれているような感じですね。何の補足も必要ないほどに、始まった途端にブロードウェイの街並や華やかなステージを連想させられる、楽しい一曲です。主旋律がテナーサックスなので、それでいて浮つき過ぎないのも良いところ。高めのフレーズも程よく落ち着いていて、キラキラし過ぎない大人っぽい雰囲気にまとまっています。

二曲目のStairway to The Starsも、タイトルが全てを語り尽くしているような作品ですね。ゆったりと落ち着いた夜のイメージの曲で、ピアノの高音がどこか街灯りや星明かりをイメージさせます。主旋律は主に低めにまとまっていて、星空に上って行くのではなく、ゆったりと腰を落ち着けて星空を見上げているような雰囲気であるように感じました。寝る前のひと時に聞きたい、とてもリラックスできる素敵な曲です。

締めはあのNight in Tunisia。アートブレイキーのアルバムでも聞きましたが、やはり演奏者や主役の楽器が変わると、随分印象が変わるものなのですね。恐らくテンポもだいぶ緩くなっているのでしょう、アートブレイキーのそれよりもワンフレーズを随分じっくりと演奏しているように感じます。全体的に都市的でモダンな印象のアレンジですね。

スピード感は無くなってしまっていますし、あの溢れんばかりのエネルギー感も感じませんので、これはアートブレイキー派の方にはちょっと評判が悪い演奏かも知れません。でもその代わり、あの独特の主旋律が持つ異国情緒の魅力がじつによく表現されていて、私はこれもまた素晴らしい演奏だと思います。どちらが好きかと言われると、僅差でこちらかも知れません。特に冒頭のフレーズの魅力を再発見させてくれたのが好印象でした。

そうそうこのアルバム、ピアノがバド・パウエルなのですね。なので、所々でニャーニャー言っているのが聞こえます。でも合奏だと、彼の鳴き声もあまり気にならないものですね。

このアルバムを聴くきっかけになったのは、最近出ているプレミアム復刻シリーズの広告でした。広告に載っているアルバムについて、CD版のサンプルをあちこちで聴いて回ったのですけれど、知っているアーティスト以外ではDexter Gordonの演奏が一番しっくりきたといいますか。

あらためてアナログ盤を聴いてみましたが、なるほどこれは復刻されるのも当たり前、というか復刻しなかったら嘘だろうというのが率直な感想です。この一枚は後世に残したいですねぇ。Art BlakeyのアルバムではMoaninが鮮烈な印象として残りましたけれど、私のDexter Gordonのイメージはこのアルバムで決まったと言っても良いでしょう。ちなみに、Lee Morganのイメージを決めたのはCandyでしたね。

テナーサックスの良いところは、トランペットなどより聞き疲れしないと言う事です。といってもまぁ、テナーでいわゆる「ムーディーな」いやらしい演奏をされると、それはそれはねちっこくて聴いていられないような演奏になってしまうのですけれど。どうもDexter Gordonは滅多にそういうことをしないようで、ビブラートや強弱もやり過ぎない上品さが良いのですよね。

このアルバムを購入して以来、まだレコード屋さんに足を運んでいないのですけど、今度からはDexter Gordonのコーナーも欠かさずチェックするようにしたいと思います。本当に何度でも聴ける、素晴らしいアルバムでした。


CANDY

今日の東京は、異常に寒い一日でした。土日は暑くて半袖が欲しいくらいだったのに、転じて暖房が欲しくなるような気温です。春の気温は不安定なものとはいえ、さすがにこれはちょっと、尋常でない感じですね。まぁここ数年はこれが当たり前になりつつあるわけですが。

天気の方も最悪で、朝から雨。昼前には止んだようですが、私はどこにも出掛けずに過ごしました。といっても、怠けていた訳ではありませんよ。本当はそのつもりだったのですけれど、何故か大掃除が始まってしまい、気がついたら一日中大いに働いて、へとへとになっていました。

連休の最終日ではありますが、今日は休日らしい事は何もしていません。掃除以外で何かした事はと言えば、ずっとレコードをかけていた事くらいですね。というわけで、今日は久しぶりに、レコードの話でも。

キャンディ+1
タイトル  :CANDY
アーティスト:Lee Morgan

冒頭は表題曲"CANDY"。とても明るくポップな感じのテーマに惹かれます。リー・モーガンのトランペットが奏でるメインテーマは、ちょっと可愛らしい感じ。子供の少しはにかんだ笑顔のような雰囲気、とでも言いましょうか。冒頭のワンフレーズで「あ、いいな。」と思わせる魅力がありますね。ソニー・クラークのピアノも実に軽やかで、曲の雰囲気を盛り上げてくれます。

続く"SINCE I FEEL FOR YOU"は転じて、とても大人っぽいスローな一曲です。冒頭はどこかスモークのかかった、景色に喩えるなら夜霧に霞む夜景のような印象。主旋律が始まると暖かみが加わり、さらにピアノに引き継がれると、明るさが加わります。暗い夜道から灯りを消した屋内へ、そして灯りを点けて・・・というイメージを想像しながら聴くと、ピッタリかもしれません。ソファに体を沈めて、ゆったりと聴きたい一曲ですね。

"C.T.A."は再び活発な印象。アップテンポである事もあいまって、活発さと言う意味では一曲目よりさらに動いている感じ。どこか舞台的なとでも言いましょうか、何かのショーのBGMのような印象です。群衆の歓声や拍手、笑い声といった賑やかさが似合いそうな曲でした。

B面一曲目の"ALL THE WAY"は、良く聴く曲ですね。ゆったりと落ち着いたメロディからは、冒頭の少しきらきらとした印象のピアノも手伝って、星空を見上げているようなイメージを想像させられます。モーガンのトランペットはこの主旋律を実に起伏豊かに演奏するのですが、それでいてねちっこくないのが良いですね。うっとりとした感じは充分に出しつつ、それでいて少し軽やかにしているのがとても良い感じです。

実はこの曲、フランク・シナトラ出演の映画の主題歌なのだそうで。映画の邦題は「抱擁」、原題は「ザ・ジョーカー・イズ・ワイルド」だそうです。言われてみれば実に映画音楽的な主旋律ですね。

"WHO DO YOU LOVE I HOPE"は、ちょっとおどけた感じの明るい一曲。ミュージカル的な印象だなぁと思ったら、やはりミュージカル音楽のジャズアレンジでした。こういった舞台音楽は、振りを付け易いという共通点があるのですよね。聴いていて、ラスベガスの舞台が浮かんで来るような独特の間合いと明るさは、この種の音楽に共通の特徴だと思います。ちなみにミュージカルの題名は「アニーよ銃を取れ」。

最後の一曲"PERSONALITY"も、どこかで聴いた事のあるメロディですね、しかも歌詞付きで。と思ったら、そういえば「東京ブギウギ」って節回しがこの曲にそっくりなのですけれど・・・というか似過ぎです。まぁ今も昔も邦楽には良くある事ですが。

とりあえず原曲はジミー・ヴァン・ヒューゼンで、この方はやはり映画音楽を、というかシナトラの曲を沢山作った方のようですね。古い映画ファンでこの方を知らなかったらモグリ・・・というくらいの偉大なメロディライターだったそうです。モーガンはこのメロディを、しなを作るような感じに演奏していて、古い映画の女優がポーズを決めている映像が目に浮かぶようです。

このアルバムは何度か復刻されている人気作のようですね。確かにどれも聴き易くて印象的なメロディラインを持った魅力的な曲ばかりですし、何より軽やかで爽やかなモーガンのトランペットがとても良い雰囲気で、何度でも聴きたくなります。

しかも、音がとても良いのですね。録音の良いモノラルとはそういうものですが、モノラルなのに何故か音がとても立体的なのです。それはもう、このアルバムのためにモノラルカートリッジを購入しても、多分後悔しないのでは・・・と思えるくらいに。リー・モーガンの魅力は勿論、モノラルの魅力をも存分に味わう事が出来る、とても素敵なアルバムでした。

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