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日々の便り

 

MISTRAL

自室のレコード置き場はそろそろレコードで一杯になりそうなのですが、その割に音楽の話はあまり書いていませんでしたね。写真はどんどん貯まる関係で、何かと鮮度が重要なので、どうしてもその他の話題は後回しになりがちです。というわけで、今晩はまた少しレコードのお話を。今日ご紹介するのはこちらのアルバム。購入したのは確か昨年の秋頃だったかと思いますが、今でも時折引っ張り出して聴いている一枚です。

ミストラル(紙ジャケット仕様)
タイトル  :MISTRAL
アーティスト:Freddie Hubbard

一曲目の「SUNSHINE LADY」は、穏やかな波の音が似合いそうな、ゆったりめのテンポの一曲。南国のビーチという感じがしますね。レコードの解説に「ナウなフュージョンタッチ」とあるように、シンンセてんこ盛りでポップなメロディを中心に組み上げられたこの一曲は、間違いなくフュージョンです。それにしても「ナウな」とはまた、時代を感じさせてくれる解説ですね。当時はこれが格好良いと思われていたのでしょうけれど。

二曲目は「ECLIPSE」。序盤は幻想的で、絵を合わせるなら深夜の都市のまばらな灯りが似合いそうです。長めのイントロが終わって暖かみのある主旋律が現れると、曲はしばしの静止の後、ゆったりとしたペースの移動感を感じさせるようになります。まるで夜の街をゆっくり歩いているかのような雰囲気の曲でした。この曲は、フュージョンよりもジャズに近い印象ですね。

三曲目は再びフュージョン全開の「BLUE NIGHTS」。タイトル通り、夜の街を走る自動車の、フロントガラス越しの景色が似合いそうな雰囲気の曲です。テンポはややゆったりめで、少しミステリアスな雰囲気が混じるのが良いですね。とても近代的な感じで、主旋律をEWIに置き換えたらT-SQUAREだと言われても信じそうな曲でした。

B面一曲目は「NOW I'VE FOUND LOVE」。歌詞のつきそうなとりわけハッキリとした主旋律のある曲で、雰囲気を喩えるなら、穏やかに晴れた青空と、遥か頭上をゆっくり流れる白い雲という感じ。爽やかではあるのですが、夏的な爽快感とはちょっと違いますね。季節に喩えるならむしろ春か秋の、暖かい日差しのような。柔らかく朗らかながら、同時に少し遠い感じのする曲です。この作品もフュージョン色全開でした。

続く「I LOVE YOU」は転じて実にジャズっぽい一曲、というかジャズですね。アルバムの曲のほとんどはフレディか他の参加者のオリジナルなのですが、なんでもこの曲だけはいわゆるスタンダードナンバーなのだそうで。フュージョン調の曲を続けて聴いた後でこの曲が現れると、フュージョンとジャズの違いが非常に良く分かりますね。そして私はどちらかというと、ジャズの方が飽きずに聴けるタイプのようです。

トリは「BRING IT BACK HOME」。ゲームならカジノのカードゲームに使われそうな感じの、ピアノパートがちょっとかっこいい一曲です。スポーツニュースなら、試合結果一覧のBGMにも使えそうですね。曲調はフュージョンですが、シンセの参加はありません。フュージョンっぽさの大半は、やたらと細かく動くエレキベースと、フュージョンならではのこのリズムが作っているようです。

フレディ・ハーバードのアルバムなので、てっきりジャズだとばかり思って買って来たのですが、のっけからフュージョン色全開だったのには驚かされました。アルバム中三曲はフレディのオリジナルですが、どれも曲調はフュージョンです。彼とフュージョンの組み合わせは意外ではありましたが、しかし聴いてみるとこれがなかなか悪くありませんでした。

中でもお気に入りなのが、B面の一曲目。ラストの「BRING IT BACK HOME」もとても良かったですね。A面でも好きなのは二曲目なので、要するに私はフレディのメロディが好きなのでしょう。個人的にお勧めなのはB面ですが、A面の曲もまたどれも聴き易い曲ばかり。爽やかな曲が多く、古臭さも感じないので、ジャズやフュージョンにあまり馴染みのない方でも大丈夫でしょう。休日のBGMにお勧めしたいアルバムでした。

SLEEPWALK

ふと気がついたのですが、そういえばこのところ音楽の話を書いていませんね。ログを調べてみたら、なんと去年の7月頃を最後に、レコードの話題が途切れていました。とはいってもレコードを聴かなくなったわけではありません。それどころか、最近はもうレコード以外は全く聞かないほどで。iPhone用に購入した高いイヤホンが、完全に宝の持ち腐れになってしまっています。

聞くジャンルは相変わらずジャズが多いのですが、ここ一週間くらいは再び集中的にフュージョンを聴いています。なんだか、急にラリー・カールトンが聴きたくなってしまいまして。というわけで今晩は、このアルバムをご紹介したいと思います。

Sleepwalk
タイトル  :SLEEPWALK
アーティスト:ラリー・カールトン

一曲目の「LAST NITE」は、繰り返されるベースのフレーズが印象的な作品。いかにも夜、それも都市の深夜をイメージさせられるような雰囲気ですね。確かこれは、この曲を表題曲とした「LAST NITE」というアルバムがあった筈。あちらで聴いた時も、似たような感想を抱いたように記憶しています。比較してみると、あちらはスモーキーな感じだったのに対して、こちらのアレンジはより都会的でポップになっている気がしました。

二曲目のBLUES BIRDは、名前の通りやや気怠いブルース風味の主旋律が耳に残る一曲。とはいっても曲そのものの雰囲気はむしろ壮大で、イントロから序盤に掛けての雰囲気は、夕陽と地平線の組み合わせが似合いそうです。そこからの展開が少し静かなので、丁度宵の星が輝き始める頃の西の空が似合いそうだと思いました。逆に、明け方のイメージでも良いかも知れませんね。つまりそういう時間帯の、青とオレンジのイメージなのです。

三曲目、SONG FOR KATIEはタイトルから想像される通り、健やかで暖かい曲です。最初は室内っぽい感じがするのですが、そこから明るく爽やかに変化し、最後はなんだかビーチの似合いそうな雰囲気に。色に喩えるなら「青と白」という感じで、良くあるリゾートのイメージが浮かんできました。

A面最後のFRENCHMAN'S FLATは、移動感のあるノリの良い曲です。前の曲の記憶も手伝って、まず浮かんで来たのは帆走のイメージでした。疾走感があると言うよりは、そこそこ速い一定速度でずんずん進んで行く感じがするので、陸上の移動というイメージではないのですよね。あるいは、海外ならハイウェイはこんな感じなのかも知れませんが。

B面一曲目は、表題曲の「SLEEPWALK」。これは夢遊病の事と思いますが、なるほど夢の中をふらついているかのような、ふわふわとした雰囲気の曲です。一口に夢と言っても色々ありますが、この夢はだいぶ健やかで穏やかなもののようですね。終盤は、すやすやと寝息を立てる子供の映像と良く合いそうな、少し可愛らしい雰囲気が少し混じります。聴いていると、肩の力が抜けてリラックス出来るような素敵な曲でした。

UPPER KERNは転じてやや都市的で活動的な雰囲気の曲です。後半にかけて雰囲気が華やいで行くのですが、全体的には光量抑えめで、どちらかというと夜景の方が似合いそうな曲ですね。華やぐ部分は、都市の灯りの中に入って行くようなイメージでした。映像に喩えるならば、さしずめ都市を縫う高速道路から見る夜景といったところでしょうか。

10:00 PMは、タイトル通り夜のイメージ。喩えるなら、ビル街を高めの位置から見下ろしているかのような。少しミステリアスで奥を見通せない深い暗闇と、そこに瞬く幾つかの灯りというような、都市の持つ静の側面を思い浮かべさせられる雰囲気の曲です。

最後の曲はYOU GOTTA GET IT WHILE YOU CAN。訳すと「やれるうちにやっておけ」。もっと意訳すると、「今だ!」という感じでしょうか。実に活動的でかっこいい雰囲気の曲で、例えばスポーツの試合のハイライト集や、カーレースの予選結果発表のBGMに良さそうです。B面はどちらかというと明るさ抑えめの曲で揃えてきていましたから、一転してエネルギッシュなこの曲は、特に印象に残りますね。

ラリー・カールトンのアルバムは何かと歌ものがつきものですが、このアルバムは珍しく歌無しでした。一番のお気に入りは最後の「You gotta get it while you can」。これはかっこいいし楽しいし、聴いていると元気になれるところが良いと思います。次に好きなのは、「Blues Bird」。あの、宵の空の青とオレンジのグラデーションをイメージさせる、ちょっと壮大な感じがとても印象的でした。

どの曲もメロディがポップで聴き易く、また雰囲気も良いものばかり。しかもラリー・カールトンならではの、あの微妙にヘタウマな感じのボーカルも入りませんので、そういうのが苦手な方でも安心して聴く事ができるでしょう。ラリー・カールトン入門用にもお勧め出来るアルバムだと思います。

STRIKES TWICE

今日の東京は、相変わらずの雨でした。天気がどんよりとしているせいか妙に眠かったので、今日はもう諦めて無意義にだらけて過ごそうと思ったのですけれど、気がついたらそれなりに有意義な一日だったような。植木はしっかり手入れ出来ましたし、久々に漫画を読む事ができましたし、久々にギターの練習もがっつり3時間も出来ましたし。

そして夕食後の時間は、ゆっくりと珈琲を飲みながら、レコードを聴いています。というわけで、今晩はこれまた久々に、今聞いているレコードのお話でも。

ストライクス・トワイス
タイトル  :STRIKES TWICE
アーティスト:LarryCarlton

一曲めは表題曲、Strikes Twice。この曲はリレコーデッドで聞いたことがありますが、それと比べると遥かにテンポが速くて軽やかなのに驚かされます。ファンタスティックな夜のドライブといった趣きの、スピード感溢れるポップな作品でした。意外とシンセが大活躍なところも、以前聞いた再録音盤とは違うところですね。

個人的には、こちらのバージョンの方が好みです。特に、冒頭の速いフレーズのスムーズさが今のラリー・カールトンとは違うところですね。最近の彼は老練さと「枯れ」が魅力ですが、やはり若い頃と比べると指が回らなくなっているのかも。そんなことを考えてしまうくらい、滑らかで勢いのある演奏です。

二曲目は歌もの。タイトルはAin't Nothin' For a Heartacheで、この曲は別の人の作曲のようです。曲調は軽やかに歩くくらいのテンポの明るい一曲。コーラスなどを交えて、なんとも80'sっぽい雰囲気を出しています。この曲と四曲目のThe Magicianが共に歌もので、作曲者も別のようですね。

三曲目のNight Paradeも、多分別バージョンを聞いたことがあると思います。でもやはり、このアルバムに収録されているオリジナルバージョンの方が軽やかですね。音のバランスがいかにも80'sという感じですが、メロディラインがそもそもこの年代のものですから、むしろこの方があっている気がします。

タイトルはNight Paradeですが、キラキラしたファンタスティクさはありません。むしろ爽やかで、私のイメージでは陽光の方が似合いそうな感じです。イントロはなるほどパレードっぽい雰囲気なのですけれど、それ以外はむしろセーリング風景でも似合いそう。爽やかな風を感じるような一曲でした。

B面一曲めのSpringvilleは、星のままたきを見上げているような雰囲気の、静かなイントロで始まります。それが次第に明るく活発な雰囲気になって行き、しまいにはエネルギッシュなロック調に。その変化の様子は、まるで何かの時間経過に伴う活動の推移を記録した映像のよう。後半の感じがちょっと「F1」っぽいので、私はサーキットの一日という印象を受けました。格好良くて、楽しい一曲です。

Mulberry Streetは街の景色が似合いそうな曲ですね。速めのテンポの爽やかな曲ですが、同時に午後の日差しが合いそうな、どこか蜂蜜色の雰囲気のあるオケです。言うなれば、午後のドライブといったところでしょうか。続くIn My Bloodは再び歌もの。ややロック風味が強いのがA面の曲との大きな違いですが、でもやっぱり普通に80'sです。それともうひとつ、この曲はちょっと音痴ですね。

締めの一曲、For Love Aloneは再び静かな曲。人気の無い夜の新宿に、静かに雪が降り積もるようなイメージ、とでもいいましょうか。非常に神秘的で厳かで静かな映像と言うと、どうも私の中ではそういうイメージになるようです。

ほとんど灯りを消したビルの屋上で瞬く航空障害灯、青白い街灯、人気の無いアスファルトとコンクリートの世界を覆って行く雪・・・そんな映像と合わせたら、とても雰囲気が出るでしょう。大半の曲が明るくエネルギッシュだった中で、この一曲だけが凍てついたような雰囲気だったので、特に印象に残りましたね。他の曲もどれも良い曲でしたが、一押しは最後のこれ。何度も聞きたくなる素敵な曲です。

アルバム全体の印象としては、80's色が強い、ポップなアルバムでした。特に歌ものの持つ雰囲気がそうだったので、全体にそういう影を投げかけているのかも知れません。恐らくメリハリを付けるために、他の作曲者の歌ものを挟んだのだろうと思いますが、個人的には歌ものは要らないような気がします。

一方、インストの方はどれも親しみ易い雰囲気で、とても聞き易かったと思います。聞いた事のある曲もありましたが、今の演奏との違いがハッキリと分かるので、それが新鮮でした。最近のラリー・カールトンから聞き始めた方にとっては、きっと色々な発見ができる興味深いアルバムだと思います。

Singing/Playing

折角の休日だというのに、今日も今日とて朝寝坊。しかも午後は留守番で、結局ほとんど何もしないで一日が終わってしまいました。こういう休日の過ごし方は、精神衛生上たいへん宜しくありませんね。

そういうわけで今日は特に日記に書くべき事もないのですけれど・・・そういえば、またしばらくレコードの話をしていませんでしたね。というわけで、今日はまたレコードを一枚聴きながら、その感想など。

LINK
タイトル  :Singing/Playing
アーティスト:Larry Carlton

ラリー・カールトンと言えばインストですが、このアルバムはそのタイトルの通り、歌ものがメインになっています。他のアルバムにも歌は入っていますが、歌の方が多いのは多分このアルバムだけではないでしょうか。彼のアルバムの中では変わり種と言っても良いかもしれません。

一曲目は"Easy Evil"。Alan O'dayという方の曲のようですが、このメロディは確かどこかで聞いた事があるような。微妙に調子っぱずれな歌声が頭に残っているので、多分ビートルズではないかと思うのですが。やや掠れたような弱い声で甘く歌うスローな曲で、これはムーディとでも言うべきなのでしょうか。古風な雰囲気なので、今となってはこれでも全然上品な気がするのですけれど。

二曲目の"I Cry Mercy"は暖かくて健やかな雰囲気の曲。ふわりと優しい感じではなくて、素朴で爽やかで暖かい感じとでも言いましょうか。一歩一歩踏みしめるような感じのリズムに、風を思わせるような爽やかなストリングス、そして明るい日差しのようなメロディラインがとても魅力的です。

続く"One More Change"はいかにもアメリカっぽい、夜の街のイメージですね。もう死語ですが、ちょい悪な感じとでも言いましょうか。A面最後の"With Respect to Coltrane"はインストで、やはり夜っぽいイメージですが、活動的な大都会の夜景を様々な視点から捉えた映像が合いそうな感じ。要は人間より自動車やビルなどといった、より無機的な都会の夜のイメージですね。

B面一曲目は、健やかなピアノで始まる優しいバラード。タイトルは"American Family"ですが、私のイメージではむしろブリティッシュロックの香りがする気がします。つまりビートルズ的なのですね、この曲も。作曲者はA面一曲目と同じAlan O'dayなので、こういう雰囲気はこの方の癖なのかもしれません。

曲の雰囲気は、暖かい家族の思い出のアルバムを開いているような感じ。この曲をバックに家族の歴史を写真で辿ったりしたら、素敵なムービーが出来るでしょう。といっても、やはりアメリカやイギリスの家族でないと、曲の雰囲気と絵が一致しそうにありませんが。

"Wavin' and Smilin'"のメロディラインはEasy Evilと似ているのですが、雰囲気がよりパワフルで爽やかになっています。最初は夜っぽいかなと思ったのですが、途中から入る高音のエレキギターの雰囲気がどうにも明るいのですよね。ピアノのキラキラ感は夜景っぽいので、夜景を見ながらのドライブのような絵が合うかもしれません。

三曲目の"Captain, Captain"はスローなピアノのバラード。健やかで素朴な感じの曲です。やはりストリングスが入るので傾向としては一曲目と似ていますが、より昔語り的なノスタルジックな印象を受けます。太いシンセリードのフレーズが独特の雰囲気を持っていて、ぐっときますね。特にラストの引き方は胸にじんわりくる感じです。

ラストの"Free-Way"はいかにもラリーカールトンという感じのインスト。作曲者が彼自身なので、彼の持ち味が遺憾無く発揮されています。このメインテーマは最近のCDでも聞いたことがあるような気がしますね。大人しい序盤は近頃のラリーに近いのですが、途中から曲が激しくなり、演奏も若さ溢れるエネルギッシュなものになっていきます。

全8曲を収めたアルバムですが、どの曲もとても聞き易い良い曲ばかりで、聞いていると時間が経つのが短く感じました。他のアルバムに収められている彼の歌はあまり好きではないのですけれど、このアルバムは調子っぱずれという事もなくて良いですね。彼のようなインスト系のアーティストが歌うとろくなことにならないものですが、このアルバムに限ってはむしろ素晴らしいと思います。

健やかな雰囲気の曲が多いのも好みですね。エリック・クラプトンのようないかにもアメリカらしい曲も好きですけど、ブリティッシュな感じの方がより好みなのです。そんなわけで、ビートルズっぽい曲が特に良かったと思います。とても心地良く、何度でも聞きたくなる素晴らしいアルバムでした。

WORD OF MOUTH

今日は妙に暖かい一日でしたね。私はちょっとした用事で一日中屋外で働いていたのですけど、夕方になっても上着が必要ないほどでした。絶好のお出かけ日和ではあったのですが、残念ながら前述のような理由で休日は返上。それどころか、気がついたら朝から8時間連続で立ち仕事だったのですから、驚きです。

用事が片付いたらレコード漁りにでも行こうと思っていたのですけど、さすがに無理でしたね。家に帰って椅子に腰掛けたら、そのまま根が生えたようになってしまいました。結局何の成果もない一日だったのですが、先週購入したレコードの洗浄だけは、半ばど根性で。
というわけで、今日は洗い立てのこの一枚をご紹介したいと思います。

LINK
タイトル  :Word of Mouth
アーティスト:Jaco Pastorius

一曲目の"CRISIS"は、のっけからいきなり破壊力抜群。人によってはこれはただ五月蝿いだけにしか聞こえないのではないでしょうか。とにかく早くて細かいベースの動きに、聴くものは圧倒される事でしょう。

このベースライン、ちゃんと他のパートとの関係性で生まれる流れを聴いてあげないと本当にただ五月蝿いだけなのですけど、実は他のパートときっちり調和していて、結構凄いんです。最初に聴いた時は本当に「うわぁ」という感じだったのですが、もう一度聴いてみて何が良いのか気がつきました。

それにしても、一曲目の掴みがこれとは。「分かる奴だけついてこい」って感じで、摑みと言うより逆に振り落としてますよね、これ。こういう事をするから熱心なアンチも涌くのです。あぁ敵を作ってるなぁ、と感じる一曲目でもありました。

二曲目は打って変わって和やかな、夕方の空が似合いそうな一曲。広い空と雄大な雲を仰ぐようなイントロから引き継ぐハモニカのフレーズは、傾きかけた陽光に染められ、蜂蜜色になった風景が似合いそうです。

三曲目、"LIBERTY CITY"は弾むリズムが楽しい、朗らかな一曲。初夏の午後の日差しのような爽やかな雰囲気なのですが、それでいてハモニカが入ったり、ブラスセクションが入ったりと賑やかです。しばしば繰り返される序盤のベースのフレーズは、音色も込みでWeather ReportのBirdlandを彷彿とさせられますね。

B面一曲目の"CHROMATIC FANTASY"は、なにやらクラシカルなフレーズで始まります。まるでクラシックギターのようなフレーズをベースがやっているという不思議なイントロから、やがてオーケストラが現れたかと思うと、今度は突然和風に転換。なんと和楽器の演奏が始まります。そういえば、Weather Reportのアルバムにもこういう曲がありましたねぇ。

区切りがほとんどないので気付きにくいですが、この曲はそのままの流れで"BLACK BIRD"に雪崩れ込みます。主旋律を奏でるのはハモニカで、なるほど飛ぶ鳥を思わせるような伸びやかなイメージ。そして曲は、そのまま区切りなく"WORD OF MOUTH"に繋がります。曲調は転じて突然ロックに。レコードの盤面を見るか、時計で時間を計っていない限り、これはここまでが一曲だと思っても不思議はないでしょう。

そして最後の一曲"JOHN AND MARY"は、非常に静かで神聖な雰囲気のイントロで始まります。序盤は、鬱蒼とした緑の中の情景が合いそうな感じですね。何やら先住民系の音楽を思わせるような歌声が入るため、よりジャングルのようなものを連想させられます。

中盤はピアノとストリングスで健やかに、清らかに。そのバックにはなにやら子供の話し声や男性の歌う声が小さな音で入っています。そして曲はコーラスに。但しコーラスと言っても序盤に登場したメロディで、非常に朗らかで陽気な雰囲気です。

なんとこの曲11分もありまして、しかも曲中に何度も転換点があるため、そうと分かって聴かない限りは一曲と気付かないかも知れません。というか前半と中盤の区切りは、どう聴いても曲の区切りに聞こえますね。

全体的に非常に奔放で、ノージャンルなアルバムでした。そしてもう一つ言えるのは、ジャコが在籍していた頃のWeather Reportそのままの雰囲気のアルバムである、ということです。当時のWeather Reportがジャコのカラーに染められていた事は周知の事実ではありますが、それがどれほどのレベルであったかがこのアルバムから伺えます。

それにしても、ジャコはアジア風やらアフリカ風やらが好きなのですね。作中にはヨーロッパ風のフレーズも登場しますが、それらもまたアジア風やアフリカ風のテイストと混ぜこぜになっていて、なんとも不思議な世界を造り出しています。この独特の世界観もまた、彼の魅力なのでしょうね。

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