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日々の便り

 

ダイナミックスタビライザ

昨日に引き続き、今日も新しいカートリッジのテストをしています。というのも、昨日はこのカートリッジの重要な機能をひとつ使用していなかったことに気がつきまして。それというのが下の写真に写っている、カートリッジ先端の青いバンパーの部分。ダイナミックスタビライザーという、SHURE独特の機構なのだそうです。

SHURE M97xE
SHURE M97xE posted by (C)circias

これはどのようなものかといいますと、簡単に言えば、カートリッジとレコードの間に入る、物理的なつっかい棒のようなもの。バンパーから生えているブラシと粘性ダンパーでカートリッジを物理的に支える事で、レコードとカートリッジの距離を一定に保つという、なんとも豪快な・・・。

レコードに接触する黒いブラシ状のパーツは導電性繊維で、つっかい棒になると同時に静電気をアースに逃がしてくれるという優れもの。冬場のレコード再生では特に重宝しそうですね。昨日はこのパーツを目一杯上に引き上げ、機能しない状態にしてレコードを再生していたのです。

いわゆる「ハイコンプライアンス」なアーム、つまり軽量で慣性の少ないアームならばダンパーは不要。従って、昨日の使用方法で正しいのだそうです。しかし、「ローコンプライアンス」な、つまり重いアームの場合、このパーツは下ろして使うのが正解なのだとか。

我が家のアームはかなり旧式でウェイトも重いものがついており、カートリッジが軽いとバランスをとれないという代物です。そもそも、ヘッドが軽いなんていう条件は想定されていない時代のものなのでしょうね。M97xEはハイコンプライアンス前提のカートリッジなので、この場合はスタビライザが必要であるらしいのです。

スタビライザを使用する場合のもうひとつの利点は、針圧をより多くとれること。M97xEの針圧はスタビライザ無しだと1.25gで、どう見ても少々軽過ぎます。そこでスタビライザをつけると1.75gまで増やせるので、まぁFF15XmkIIくらいの圧にはできるわけですね。ちなみに、ナガオカのNT-500Mの場合は3gかけます。

というわけで、針圧を1.75gに設定してスタビライザを使用してみたのですが・・・案外、良い感じですね。ナロー過ぎた空間表現が、気にならない程度にまで広がったように感じます。それに、中高域の音量が増して、音が太くなりました。ということは、スタビライザ無しの針圧1.25gだと、カートリッジがアームの慣性に負けていたのでしょうね。

全体的に端正な音の傾向は変わらないので、やはりJazzに最適とはいい難いのですけど、しかし、明らかに向かないという事はなくなりました。

そこで試しにクラシックを再生してみたところ、こちらは非常に良い感じです。NT-500MやFF15XmkIIではビビリが出るような大音量のアタックが入るレコードでも、全く問題なく奇麗に再生してくれるのには驚きました。いつぞのグリーグのピアノ協奏曲は、このカートリッジが一番奇麗に再生しますね。ピアノが激しく叩き付けるところで、音が全く割れません。

恐らく、NT-500MやFF15XmkIIはダイナミックレンジが狭く、コンプレッサをかけるように小音量部分を底上げして再生しているのでしょうね。そのため小音量の再生では、むしろそれらの方が心地良い再生になるのではないかと。

これに対してM97xEはダイナミックレンジが広いため、ある程度音量を上げてやらないと、小さい音が聞こえなかったりします。その代わり、非常な大音量や極めて急激な音量変化にも破綻なく追従し、音色を壊さずにきれいに再生してくれるのでしょう。まさに一長一短という感じですね。用途によって使い分けるのがよさそうです。

全く駄目だと思っていたM97xEですが、例によって駄目なのは装置ではなくて私の方でした。マニュアルはちゃんと読んだのですけど、表現が分かりにくいのですよ。
トーンアーム重量の不適合などによる困難な再生条件においても

なんて言われたって、私みたいな素人はピンと来ませんってば。あれこれ調べてみて、ようやくその意味が分かりました。やはり、アナログの世界は奥が深いですね。


SHURE M97xEを試す。

ものの善し悪しは比べてみないと分からないものですが、比べようにも基準がないと困るものですよね。そういう意味で、定番とかスタンダードと言われるような機器は役に立ちます。というわけで、とりあえず持っておきたいと思っているカートリッジが幾つかあるのですけど、今日はその中のひとつが届きました。

2013-10-31
2013-10-31 posted by (C)circias
○SHURE M97xE
定格出力電圧:4mV
周波数応答:20Hz〜22kHz

MM方式と言えばSHURE。そのリスニング用カートリッジの最上位機種です。店によっては結構お値段の張るカートリッジですが、サウンドハウスさんなどでは8000円前後で手に入ります。今回、もう少し安いお店があったので、先行投資のつもりで購入してしまいました。

シェルはオーディオテクニカを使う予定だったのですが、オーテクさんのシェルとは寸法が合わず、あえなく断念。オルトフォンの安いシェルを使用しています。今晩はこのカートリッジを、いつものNT-500Mと比較してみましょう。


2013-02-12
2013-02-12 posted by (C)circias
○NAGAOKA NT-500M
定格出力電圧:3mV
周波数応答:20Hz〜20kHz

M97xEの音の傾向は、ハイファイであっさり目。全体的に音のきめが細かい感じがします。ただその反面、どのレコードでも表現が抑制的になり、特にジャズではあまり「楽しさ」がありません。あまり熱量が伝わって来ない音です。

音のバランスは、NT-500Mよりやや低域が強いでしょうか、引き締まったスピード感のある低音を聴かせてくれます。また、中域の音の減衰が早いため、全体的にすっきり整理されたあっさり目の印象に。ユニゾンやコーラスでは、個々の音を聞き分け易いように感じました。

高音はあまり強くありませんが、細かい音をよく拾います。そのため、管楽器のアタックやベースのアタックに含まれる、しわがれたようなあの独特の音が生々しいのが印象的。そのくせ管楽器が音を引っ張るシーンで、音の中盤以降に来るいわゆるコブシの部分の熱量を再現できず、サラっと流してしまいます。

ピアノの音色が滑らかで前に出る一方、管楽器や弦楽器は控えめに。空間の表現もあまり得意では無いようで、少し狭いように感じました。

同じレコードをNAGAOKA NT-500Mで聴いてみると、まずその音量の大きいのに驚かされます。スペック表ではM97xEの方が電圧が出ることになっているのですが、明らかにNT-500Mの方が大音量に感じますね。あるいは、コンプがかかったような音なのかも知れません。

音量だけでなく、管楽器のぐっと力を込める感じや強弱の表情は、NT-500Mのほうが明らかにくっきりと描写してきます。そしてなにより、チャンネルセパレーションではかなり劣る筈のNT-500Mの方が、広々とした音場を再現します。特にライブ盤ではこの傾向が顕著で、臨場感の違いは圧倒的でした。

お値段の比較をすると、NT-500Mが正規品で3500円くらいなのに対して、M97xEは11000円から17000円くらい。三倍から五倍程度の差があるカートリッジなのですけど、どちらが聴いて心地良いかという基準であれば、明らかに軍配はNT-500Mのほうに上がります。しばしば費用対効果の高いカートリッジと言われているのが裏付けられた格好ですね。

まぁこういう結論になったのは、システムの相性も大きいのでしょう。なにしろ修理品ばかりのジャンクの組み合わせで構築されたシステムですから、高級オーディオを揃えておいでの皆さんの参考にはならないかも知れません。念のためにシステムを書いておくと、こんな有様です。

プレーヤ:PIONEER MU-61 修理品(部品自作)
アーム :機種不明、中古。
アンプ :ELEKIT TU-877 修理品(部品交換、回路定数変更)
プリ  :MARANTZ PM6100SA(フォノイコとして利用)
スピーカ:B&W DM601 S3 中古

見事なまでにいい加減というかガレージ感溢れるというか。いっそのこと、そのうちフォノイコも自作してやろうかなどと考えていたりします。

恐らくHiFiにはほど遠い音なのでしょうけれど、結局オーディオなんて聴いて心地良ければそれで良い訳で。そういう意味で、NT-500Mは名機のような気がしますね。M97xEを評価するつもりで、図らずもNT-500Mを見直す結果になってしまいました。

投資が無駄になった感は否めませんが、まぁ、実際に比べてみない事には分からないことですからね、いわば授業料ということで。それに、M97xEにも優れたところはありますので、色々とセッティングを練れば、案外使いどころはあるかも知れません。そういう遊び方ができるのも、レコードの面白さですね。

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