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日々の便り

 

いまさら届いた例のアレ

とうとう緊急事態宣言が解除されましたね。やや見切り発車感はあるものの、経済動向を見るに、そろそろ限界という判断だったのでしょうか。しかし、そういう空気を察してか否か、先週末の東京は既にだいぶ緩んだ空気になっておりまして。河原が混んでいるのはいつものことですが、それに加えて市街地に、マスクもせずに出歩く集団がとても多く見られました。

暑いからとか、化粧が云々とか、まぁ色々と理由はあるのでしょうけれど、なによりもう皆さんウンザリし始めているのではないでしょうか。やはり、差し迫った見える危険がないままに、一ヶ月以上も緊張を保ち続けるというのは難しいのだと思います。そこへ宣言解除になりそうな空気と、長雨の後の晴天ということもあって、街へ繰り出した人が増えたのでしょう。

大方の予想通り緊急事態宣言は解除されたわけですが、一方でサッパリ進まないのが具体的な施策の方です。補助金の類は例によって書類祭りで、そう簡単には申請できない仕組みになっていますし、申請したところでなかなか支給されないそうで。どうにも日本というのは何をやっても動きが遅い体質のようですね。拙速より巧遅とはいいますが、ものには限度があるというものです。

そういえば、一頃何かと話題をさらったアベノマスクですが、もう皆さんのお宅には届いたでしょうか。なんでも感染者の多い都道府県を優先しているとかで、東京都や北海道はその優先対象だったはずなのですが・・・我が家には届かず。これはもう、騒動が終わってから届くのかもねなんて笑っていたら、ようやく我が家にも届きました、先ほど。

アベノマスク
アベノマスク posted by (C)circias

もうツッコミどころ満載で、どうしてくれようって感じです。うちのような大家族に二枚だけ配ってどうするんだとか、もうマスクは普通に手に入るぞとか、こんなちっさいガーゼマスク何に使うんだとか。何より笑うしかないのは、「優先的に配布されたのに」緊急事態宣言が終わった後で届いたということ。瓢箪から駒、とでもいいましょうか。

実用できない繊維ゴミに数十億単位の税金を突っ込んだ時点でもうアレですが、せめて配達が早ければもうちょっと格好もついたのでしょうけれど。遅れに遅れて優先対象で緊急事態宣言解除後って、もうなんのギャグですかって話です。優先対象の都内でさえこのザマでは、その他の県ではいつになるのでしょうね。

誰か、アベノマスク到着時期マップとか、作ってくれないかな。きっと面白いことになりますよ。

保身と無責任の行方

なにやらまた都知事が必死になってアピールしているようですね。なんですか、買い物に行く人数を絞れだの、三日に一回にしろだの、入店制限をしろだの。それらを忠実に守ると何が起きるか、誰かあの生活力のないおばさんに説明してあげなかったのでしょうか。

1)買い物人数を絞るとどうなるか
当然、持ち物が増えます。一人暮らしや二人暮らしならともかく、家族が大勢いる家の場合、その増え方は大変なものになるでしょう。すると会計に時間がかかり、袋詰めにも時間がかかります。結果、レジで大渋滞が起きます。というかこの現象、すでに起きているんですよね。それが酷くなるわけです。

2)買い物頻度を三日に一度に減らすとどうなるか
一回の購入量が3倍になります。すると1)の現象はさらに酷くなります。しかも、初回は店側も備えていませんので、あっというまに買い占めと品切れが起こります。すると、品切れに誘発されたパニック買いが発生し、品薄が長期化することになります。準備もなしにこんな要請をするのは、買占めをやれと言っているのと何も変わりません。

3)入店制限をするとどうなるか
ただでさえ営業時間を短縮されたせいで、分散していた買い物客が限定された時間に殺到しています。そこに入店制限などかけたら、店の外に行列ができます。行列を安全に待機させることができるマーケットなど、市街地にはありません。結果、普通に営業しているよりも多くの人が互いに濃厚接触することになるでしょう。

そもそも、スーパーが混んでいるのはあのおばさんが余計なことを言って、営業時間を短縮したからなんですよ。もともと、働いている人は買い物できる時間なんて限られているんですから。それを夜中にずらすのではなく、夜中をカットして夕方に全部詰め込んだのですから、混まない方が不思議です。まぁ、あのおばさんは家事なんてする必要がないから、そのあたり実感がないのでしょうけれどね。

それにしても、小池知事は騒動の初期から、どうしてこんな誰のためにもならない宣言を連発して、高齢者のパニックを煽っているのでしょうか。恐らく一つには、「自粛」を呼びかければパニック勢からの支持率がアップするから、というのがあるのでしょう。もうひとつは、保身ですね。何もしなかったと言われないためには、実効性が皆無であっても何かしらアクションをしておかなければなりません。

煽れば煽るほど高まるパニック勢からの支持率に、よほど気を良くしているのでしょうね。繰り返される無責任な会見が、幾度もの買占め騒動や現在もある河原やマーケットでの混雑を作り出しているというのに、ご本人はさらに意気軒昂です。「呼びかけ」だけして、一切補助もしなければ責任も負わない。随分と都合のいい実績づくりもあったものですね。何もせず、口だけ動かして「実績」をアピールする。そんな薄汚い日本の権力者の典型的な行動と言えるでしょう。

こんな無能な口だけ人間が政治屋をやっていられるのは、結局のところ簡単に煽られてそれを支持する人間が大勢いるからで・・・なんとも絶望的なことです。少なくとも民主主義国家において、政治の質は大衆の質の反映なわけで、つまりこれが現代日本の本質だというわけですね。なるほど、常日頃、職場でミニ小池をよく見かけるのもある意味当然と言えるでしょう。

結局今回も、責任を取るべき人間はほぼ何も有効な手立てを取らずに口だけ動かして、あとは現場の頑張りで危機を切り抜けて、うまくいったら連中はその手柄を自分のものにするだけ。うまくいかなかったら、現場のせい。

でもこれって、実は戦前からの伝統なんですよ。学校では一切教えてくれませんが、第二次大戦中の戦闘記録を調べれば、「日本企業あるある」や「お役所あるある」の塊であることに気付くでしょう。現実からは目を背け、楽観論を礼賛し、責任は押し付け合い、困ったら精神論、保身のための中途半端な対策で戦況を悪化させる指導者たち、足りない戦力が逐次投入され、無意味に蕩尽されていく。

ね、コロナ対策でも、そのまんま当てはまるじゃありませんか。要するに、明治以降の日本は何一つ進歩なんてして居ないって事です。うんざりしますね。教育も、祈りだの想いだのとお花畑なことを刷り込んでないで、もっと本当の戦史を叩き込むべきだと思うのですよ。そうすれば、少なくとも若者には、日本的失敗パターンが見分けられるようになるでしょうから。

まさか

何か問題が起きた時、たとえば交通事故や災害に巻き込まれた時、大抵の人がこう思うのではないでしょうか、「まさか」と。テレビなどでそういう発言をしている人を見ながら、「呑気だなぁ」とか「平和ボケだなぁ」なんて笑っていた私ですが、なるほど当事者になると思うものなのですね、「まさか」って。

親族のことなのであまり詳しいことは書けないのですが、なにやら非常に物騒なことになってきていますので・・・「まさかのまさか」があった時のために、色々ぼかして書いておこうと思います。

ことの始まりは数年前、とある親戚の老人が親戚との養子縁組を破棄して、我が家に後見人になって欲しいといってきたのです。もともとうちの人間を養子にしようとしていたのを断ったので、別の親族を養子にしていたのですが、どうやら馬が合わなかったようで、結局破綻してうちに頼ってきた格好ですね。

他の親族は皆その人の要請を断っていましたので、仕方なく老人ホームに入るためのあれこれから、家に溜まったゴミの処分やら、定期的な訪問と外出の付き添いやらと、ただでさえ別の親族の介護で忙しい我が家は、さらにてんてこまいすることになりました。

しかし、ここへきてようやく片付けも一段落し、少し落ち着いたかと思いきや、新たに問題が持ち上がったのです。なんと、その老人の後見人を断ったある親族が、その老人の財産を分与しろと我が家に迫ってきたのです。・・・意味がわからないでしょう? でも、これ、本当のことなんですよ。

彼がまずやったのは、親族の老人への直談判でした。老人ホームに突撃した彼は、当人になにやら訳のわからないことを延々と話したのだそうで、要約すると「金をくれ」ということだったのだそうです。色よい返事を得られなかった彼は、今度は養子縁組を切られた親族のところへ行き、感情的に詰ったのだそうです。「お前がしっかりしていないから、あいつらに財産を持って行かれたのだ。」と。

しかしです。金を無心している彼は親族ではあっても、親子でも兄弟でもないのだから相続権は持っていませんし、そもそも後見人を断ったクチ。法的にも道義的にも、彼に流れるべき財産などもともとびた一文ないのです。持って行かれたもなにも、ねぇ。それに、まだご当人はご健在なのですから、財産の分配も何もないでしょう。

だいたい、後見人というのは、あくまで後見人ですので、後見する相手の財産を好きにすることなどできません。むしろ、その老人の財産が尽きてホームへの支払いが滞ったりした場合、支払い義務を負うのが我が家です。現時点では、我が家に勝手に処分できる財産などないのですよ。・・・と思ったら、彼が言っているのはそういう事ではなかったのですね。

曰く、預かったものは好きなように横領できるだろう、と。臆面もなくそんなことを言ってくるのだから驚きました。「お前たちはその老人の財産を使っていい思いをしているに決まっているのだから、俺にも分け前をよこせ」と。それだけでも驚きですが、彼の奇行はそれだけではありませんでした。

後見している老人とその元養子のお二人から事情を聞いていたので、妙なことになっているなとは思っていたのですが、突然我が家に電話してきたと思ったら、怒鳴り散らしたのです。お前たちは不当だ、お前たちが得ている利益は俺のものだと。なにやらありもしない過去まで捏造して、それはもう口汚く罵ったのだとか。

あまりに興奮していて電話では埒が明かないので、とりあえず会って話すかということになり、本日我が家に来る・・・はずだった彼。ところが、どうしたわけか本人は何の連絡もよこさず、顔も出さず。意味不明にもほどがあります。結局、何がしたいんでしょう?

我が家は貧乏ですので、こういう遺産がどうとか財産がどうとかいう争いとは無縁だと思っていましたし、顔を真っ赤にして大暴れしているらしい彼も、昔はこんな事をするような人ではなかったのですけれどね。そもそも彼は家だって持ってますし、高級車やハーレーを乗り回したりしてますし、到底お金に困っているようには見えないのですが、何をそんなに必死になっているのでしょう。

あまりに不自然な変貌ぶりに、不快に思うより疑問の方が先に立つくらいです。どう考えても、尋常な状態ではありませんよね。なんというか、不気味ですよね。ちょっとしたホラーよりゾっとします。

そもそもお金をせびりたいならうまく取り入れば良いのですし、泣き落としだって有効でしょう。それを、「俺の財産を奪うな」なんていって八方喧嘩を売って歩いたって、誰も味方などしてくれる筈もなく。目的が金銭だったとしても、やり方があまりに不自然なのです。あるいは、誰か焚き付けている人でもいるのでしょうか。

口を開けばありもしない他人の瑕疵を感情的に批難する有様も、どう考えても正気の沙汰ではないですし、親しかった親族の財産を、まだ相手が健在なのに奪い取ろうとするその姿勢も普通ではありません。常識的に、考えるまでもなく無茶を言っている筈なのですが、どうやら彼の中ではあくまで自分は不正をされた被害者で、相手は悪党なのだから謝罪と補償をするべきだ、という意識が確立されてしまっているようなのです。

・・・あ、ソレどこかで見たな、と思ったあなた。違います、我が家は戦国時代から続く日本人の家系ですから。

ともかくもそういうわけで、我が家は只今、まさかの親族トラブルの真っ最中。相手の支離滅裂っぷりと、意味不明な行動の数々に戦々恐々としております。まさかとは思いますが、まさか、ねぇ。家族で話し合って出た結論は、「戸締りはちゃんとしようね」でした。それこそまさかですが、あの狂乱ぶりですと、まさかのまさかも無いとは言えず。

本当に、まさかですよねぇ。意味不明かつ身勝手な自己完結をした親族に、突然危害を加えられる類のニュースは度々目にしてきましたが、まさか当家がその一歩手前の状態にまで追い込まれるとは。人生、何が起きるか分からないものです。


日本企業はITに弱い

Photo蔵がまた緊急メンテナンスだそうです。ここ半年くらい、むしろまともに使えていた時間のほうが短いのではないでしょうか。少なくともここ一月で2回目か3回目の「緊急」ですよね。これはもはや、使い物にならないと言われてもおかしくないレベルだと思います。

こう短期間で何度も何度もサービスが停止するレベルの重度障害が再発し続け、なお解決の兆しが見えないということは即ち、そもそもシステムの設計そのものに致命的な欠陥があったということ。またしても、日本企業のIT音痴が露呈した格好と言って良いのではないでしょうか。

これまで利用してきた各種国内企業のサービスは、有料であれ無料であれ、その全てがこのパターンに陥った後、ろくなフォローもなしに開店休業状態を経て、結局閉鎖という流れになってきました。Photo蔵も同じ轍を踏むのではないかなぁと、正直半ば諦めモードです。

というわけで代わりになるサービスを探しているのですが、何か良いものはないでしょうか。Tumblrのブログ埋込機能は、どうやらFC2では機能しないっぽいのですよね・・・と思いきや。

http://rascus.tumblr.com/post/168930912619/キアゲハ-景信山にて


おや、プレビューだとダメなのに、本物のサイトでは表示されますね。最近何かと物議をかもすあのインスタに頼るしかないかと思っていましたが、これならばなんとかなるかも知れません。ちょっと画像がボケるのが気になりますが、それさえどうにかできれば完璧です。少なくとも、現状でもPhoto蔵よりはあてになりますしね。

それにしても、いやはや、ダメですねぇ日本。プログラマとして働いていると、60〜70代が仕切る日本企業が、どうしてITに弱いのかがよくわかります。要は、経営者や管理職に学習意欲がないからなんですよね。馬鹿で勉強が嫌いなくせに、見栄を張りたいから、聞きかじった精神論を振り回してばかりで。

少なくともITに精神論は通用しません。どんなに意識を高く持ったところで、作りがだめなら壊れるし、壊れることを想定していなければ復旧はできない。なのに、必要な設計と投資を怠って、ブラックな労働と最低限のインフラのみで「利益率の良い」サービスを始めるから、結局破滅が待っているのです。

1)希望的観測と精神論による甘い見積もり
2)技術陣の反対を無視して強行
3)当初の成功に浮かれて問題を放置
4)障害発生
5)目先の問題のみに場当たり的に対処
6)障害が多発
7)場当たりを繰り返すも根本原因は放置
8)状況が制御不能になる

という日本ならではの必敗パターンに、どの企業も陥るのですよね。これはITに限らずでしょうか、T芝の投資もそうでしたし、そういえば某エアバッグ問題も、某空飛ぶタイヤも、どれも同じパターン。実はこれ、二次大戦中の日本軍もやっていた日本のお家芸でもあるんです。

何度やっても懲りないのは、どうしてなのでしょうね。謝罪だの願いだの誓いだのと、実のないスカスカの反省ゴッコを子供に刷り込む暇があるのなら、この必敗パターンに陥る理由と対策を徹底的に叩き込むべきなのではないかと思う今日この頃です。

娯楽作品とその感想に見る平和ボケ

夏目漱石はその作品「点頭録」の中に、こんな一文を残しています。

“実際欧洲の思想家や学者はそれ程実社会を動かしてゐるのだらうか。”
抜粋:: 夏目漱石. “点頭録”


これは第一次世界大戦と、当時しきりに話題に上っていたある思想との関連性について、論じた回に登場する一文。漱石は、世間が持て囃している程思想は戦争に影響しておらず、政治はあくまで政治であって、別の力学で動作しているものを、メディアやら学者やらが思想家とそれらをくっつけたがっているだけである、と指摘しました。

しかし誠に残念ながら、大衆とメディアの夢見がちな思考は、100年前から何も変わってはいません。当時もそうであったように、現代においてもメディアは思想と政治のこじつけが大好きです。ことに、戦争と平和という命題においてはその傾向が顕著であると言えるでしょう。分かり易い事例を挙げるなら、ベトナム戦争を反戦運動が終わらせた、などという主張がそれですね。

こういうことを言いたがる人々にとっては、戦争中の「美談」も、格好の燃料となるようです。曰く、人と人とは分かり合えるのだ、対話によって争いは解決出来るのだと。なるほど、確かにその通りではありますし、それが理想ではありましょう。しかしながら、その主張が通用するのは個人間での諍いまでなのです。

歴史的事実、それもメディアが書きたがらないデータとしての側面から見た戦争が終わるための条件には、面白みも暖かみも何もありません。それは極めて冷酷な、力と利益の計算の世界です。そもそも戦争はなぜ起こるのか、その始まりに目を向けるなら、どうしてそういう結末になるのかも自ずと理解出来るでしょう。戦争の種類は、大きく分けて二種類です。

1)領土、貿易など、経済的権益に端を発する戦争
2)思想信条に端を発する戦争

言い換えるなら、こうも表現出来ます。

1)殺傷行為以外に目的がある戦争
2)殺傷行為そのものが目的の戦争

まず大半の戦争は1)であるといって間違いありません。いえ、全てと言っても良いでしょう。しかし、実質的に権益のための戦争であっても名目上2)とされる戦争もあり、そしてこの種の戦争はその性質上、1)よりもさらに面倒な結果を招きます。

国家の利益を確保する戦争の場合、いずれかの当事者にとって戦争が「どうしても割にあわない」状況になった時、戦争が終わると言って良いでしょう。敗者の完全敗北であれ形式上の停戦であれ、これには必ず実質的な勝者と敗者が生まれます。敗者は損失を最小化しようと交渉し、勝者は利益を最大化しようと交渉しますから、軍事的に明白な勝敗がついた後でさえ、交渉による停戦ないし終戦は非常に困難な作業となります。

まず停戦交渉を先に言い出した側が、交渉の席では不利になります。ですから、不利な側から停戦交渉を持ちかける事はできません。有利な側から申し出る場合、それは降伏勧告になりますが、当然不利な側はそれに直接応じる事はできません。応じてしまえばその後の交渉で、圧倒的な不利になりますから。近現代の武力衝突において、当事者が調停者を第三勢力に頼む理由は、まずここにあります。

表向き利害のない第三勢力が仲介をし、双方がその第三勢力の顔を立てるという名目のもと、スタートラインを揃えて交渉のテーブルにつけるというわけですね。近現代における現実世界の戦争は、このタイプの終結方法がほとんどです。実質はどうあれ、どちらの政府も「自分たちは負けていない」と主張出来るため、政治的にも選択し易い方法ですね。

この事から、「思想」や「世論」が戦争終結に影響を及ぼし得ない事が御分かり頂けたと思います。仮にそれに応じる形で自分から停戦を申し出てしまった場合、それは国家に重大な損失をもたらしかねないのですから。もっとも、そうなったら「世論」は無責任に掌を返すのでしょうけれど。


さて、戦争が2)のタイプである場合、状況はさらに絶望的です。近年で言えば、ISの仕掛けた武力闘争がそれ、名目上の宗教戦争にあたると言えるでしょう。あれも実際には実に生臭い実利的な闘争なのですが、しかし表向きは宗教を理由にしており、その目的は異教徒の殲滅であると公言して憚りません。この場合、指導部はともかく末端では、戦闘行為そのものが戦争の目的になります。

このタイプの戦争では、通常の紛争とは異なり、一方的な加害者と完全な被害者という関係性が生まれます。その上、主に民族の誇りだの宗教だのと言った、実体のない虚構が加害側の理由付けになるため、加害側は「交渉」も「敗北」も許されません。例えば、民族Aは悪魔の子らである、故に殲滅し浄化するのが神の敬虔なる信徒の務めである・・・などという戯れ言を大義名分にした場合、停戦した途端に国民は丸ごと背教者になってしまいます。

しかもこういった戦争の場合、加害側の戦闘員や市民が自らの罪を自覚している事も問題です。決して当人は認めませんが、それでも加害者であることを意識しているからこそ、虚構の大義名分が必要になるのですね。殊更に神の名を掲げたり叫んだりする行為などは、その最たるものです。なのに、停戦や敗戦をしてしまったら、彼等は自らの罪を認めざるを得なくなります。そもそも民族や宗教に縋るような理性の弱い人間にとって、それは不可能な選択なのです。

つまりこういった闘争の場合、加害側か被害側のいずれかが、軍事的に完全に屈服させられるまでは戦争が終わりません。そして、仮に加害側の敗北で戦争自体が終わったとしても、それを認める事が出来ない加害者達のテロリズムという形で戦いは続くのです。いずれにしても、そこに「思想」やら「世論」が入り込む余地など、ほぼ無いことは御分かり頂けるでしょう。

ところで、娯楽作品で描かれる戦争のうち、より多いものはどちらでしょうか。所謂「文学」や「児童文学」に分類される程度に高度な作品においては専ら1)の権益の戦争なのですが、数において圧倒的多数を占めるその他においては2)であるようです。そうした作品を理に適った展開で描くなら、ひたすら泥沼の戦争に突入するなり、一方的に加害側を殲滅し尽くすなりする以外、戦争の終結方法は有り得ないことは、前述の通りです。

ところが、こういった作品には時折、夢見がちなヒューマニズムが持ち込まれるのですよね。例えば主人公達の善行がきっかけで、両勢力に和解の気運が生まれてしまったり。特に、敵を助けるような「美談」は、ヒューマニストの皆様には大変評判が宜しいようで。

実際のところ、現実にある戦争でも稀に「美談」が生まれる事は、ある意味私達にとって慰めと言えるかもしれません。しかし、欲目無しで現実を直視するならば、「美談」が効力を持つのは戦争が決着した後であって、戦争中ではない事を認めないわけにはいかないでしょう。そういった美談は戦後、充分にほとぼりが冷めてから、メディアによって充分に脚色された形で伝えられるからこそ美談になるのであって、戦時下では厳しく糾弾される行為なのですよ。

また、仮にひとつや二つの善行が現場で確認されたとして、それ自体が戦争全体に影響を与える事はありません。特に、どちらか一方であれ双方であれ、指導部が戦争続行を望んでいるのなら、無視されるか握りつぶされるのが普通です。最も救われる対応だったとしても、戦後の融和政策のためのカードとして記録に留められて終わりでしょう。しかも、それがあり得るのは1)の戦争の場合であって、2)の戦争では有り得ません。

にも拘らず、こういった夢見がちな主張を大真面目に語る人が、意外と多いのですよね。殲滅戦争の加害者を助けたら対話が始まる筈とか、一体どれだけ夢見がちなのでしょう。そもそも、「殺す事が目的で殺している」殺人鬼に刃物を突きつけられた状態で、説得をする暇があるとでも思っているのでしょうか。彼等の主張は、駅を通過する急行列車の前に飛び出して、運転士に対して轢かないで欲しいと交渉を試みろと言っているようなものです。

しかも甚だしい者に至っては、「相手と同じレベルに落ちないためには、善行を積んでみせる必要が云々」などと道徳論を説き始める始末。そもそも命の取り合いをしている現場で、味方の命を代償に支払ってまで加害者を助ける事を正義であるとまで仰るとは、なんとも見上げた人道主義もあったものです。ところでその主人公は、一体何の権利があって被害者側の誰かの命を実質的に奪うのでしょうね。しかも、よりによって加害者のために。

こういった行き過ぎた独善的な「人道主義」の背景には、作者や読者の自己陶酔があります。彼等は、「命は皆平等」という言葉の意味を考えもせず、ただ目の前に見えているものがその言葉をなぞる事だけに満足感を覚えているのですね。なるほど、加害者に慈悲をかける事は確かに立派に見えます。そこだけを見るならば。しかし、そのために無辜の第三者の生命や財産を奪うのならば、果たしてそれは善行でしょうか?

恐らくこういった独善的で自己陶酔的な「人道主義」が横行する原因には、日本という国の平和さがあるのでしょう。一般市民は通常、自らの命や他者の命について、危機を感じる事はありません。従って、大抵の物事を「安全地帯に居るつもりで」考えてしまうのです。もっと言うならば、テレビを見ている感覚で物を言う、とでも言いましょうか。

安全な場所から見ている他人事だからこそ、犠牲になる第三者の事など目に入らないし、目に入っている主人公の行動が「善行」に見える事を何よりも重視します。そして、周囲への影響や主人公の責任など考えようともしません。ともすれば、そんなものは目の前の「善行」に比べたら無価値なものであるとまで言い放てるのです。

恐ろしい事に、こういった思考をする人々は虚構の世界だけでなく、現実の世界の事柄に対しても同様に考えるのです。例えば、凶悪犯に発砲した警官を非難してみたり。その急先鋒が既成メディアであり、その熱烈な支持者達であることは言うまでもありません。

結局のところ、多くの日本人が独善的な「人道主義」が大好きなのは、つまりそれでも問題なく生きて行ける平和な社会だからであり、そこに蔓延った自己陶酔的正義を振りかざすメディアの主張にすっかり染まっているから、と言って良いのではないでしょうか。もちろん、耳に快いからと言ってそんな戯れ言に陶酔する本人の無思考と無自覚な利己主義もまた、大いに糾弾されてしかるべきではありましょうが。

娯楽作品とその周囲に溢れる独善的人道主義と、それに陶酔する人々をみるにつけ、薄ら寒いものを感じずにはいられない今日この頃です。


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