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日々の便り

 

ピアノの森

なんかNHKで音楽アニメをやっていますね。「ピアノの森」とかいう作品で、方々から絶賛されているんですけれど・・・あれって、何が面白いんでしょう?
少女漫画的なテンプレ音楽もので、これ絶対作者はオバハンだろと思っていたのですが、これが大正解。うん、昭和のテンプレですものねぇ。あとこの作者、楽器演奏できないんじゃないかな。

のだめカンタービレは、同じくオケ経験のある人間であれば、「そうそう、それな!」と共感できるシーンのオンパレードでした。これは作者が音楽経験のある人間だったからこそなのでしょう。天才の苦悩とか誰でも書けるようなテンプレ要素より、本当に音楽をやっているからこそ分かる難しさが随所に現れていて、故にセリフの一つ一つが重く、説得力があったのです。

一方で、ピアノの森はスッカスカなんですよね。音楽をわかっていない人間が知ったかぶりで描いている匂いがプンプンします。ハッキリ言ってうざったい、気持ち悪い。台詞に説得力が皆無なんですよ。例えば今日のセリフ。「ピアノって、誰が弾いても同じように音が出るだろ」・・・出るかよ、阿呆。本当にピアノを知っていれば、絶対に出てくるはずのない一言です。

「究極、猫が鍵盤を踏んでも同じ音が出る」とは大したものですね。なるほど、作中のお歴々の演奏能力は猫と同等であると。まぁそういうファンタジー世界なら致し方ありませんが、現実世界ならそんな評価ができるのは幼稚園のお遊戯ピアノまでなのですよ。

吐き気がしますね、こういう知ったかぶりの音楽論。ピアノはものすごく繊細な楽器です。タッチ一つで音が変わるのは言うまでもなく、それ以前に鍵盤の深さや重さの調整でもガラっとキャラクターが変わる楽器なんです。単音を正確に出すなら確かに等速等圧で鍵盤を叩けば良い。でも、それでは音が濁るんですよ。

下手くそなDTMの打ち込みピアノの音が汚いのは、各音のベロシティ調整が適切にできていないから。各音の強弱を少しずつ適切に調整するだけでも、同じフレーズが別物のように綺麗に響くのです。ピアノが弾けない打ち込み屋でも知っている程度の初歩の知識すら知らない無知な人間が、聞きかじった知識で知ったような口をきくのが、なんとも鼻もちなりません。でも、こういうのの方が流行るんですよねぇ、なんでかな。

いや、分かっているんですよ。「のだめ」のようなリアルな音楽ものの評価がそこそこなのは、本当に音楽をやったことのある人間が少ないから。あのリアルな、格好良くない音楽の世界に共感できる人間は少ないから。一方で、「ピアノの森」のようなお耽美系テンプレ青春音楽ストーリーが絶賛されるのは、音楽経験のない圧倒的大多数の人間が誰しも想像する「ぼくのかんがえたすごいえんそうかのせかい」だからです。

そもそも、本当にピアノが好きな人間が森の中にピアノを置くものですか。それがたとえ抽象的な意味の幻想としてであっても、です。オタ作品にありがちな、波打ち際でバイオリンを弾くヒロインみたいなものですね。なんですかその自爆芸。実は出落ちなんですかね? もしかしてそれ、笑うとこ?

少なくともこの作者は、森のことも楽器のことも、何一つ分かっていない。そうでなければ、真面目な音楽ものを自称しておいてそんなシーンなど書けるはずがありません。タイトルの時点で虫酸が走るのですよ。のだめは毎回「おおっ」と思わされましたが、「ピアノの森」はセリフが聞こえて来る度に「うげぇっ」と思わされます。二番煎じに昭和のテンプレを添加したコテコテのまがい物の、いったい何が良いのでしょう。本当にイライラしますね、こういうの。

これの評価が高いという時点で、あぁ、やっぱり日本人って、音楽的に低レベルなんだなぁと思い知らされます。音楽教育自体は結構手厚いのに、どうしてなんでしょうねぇ。

New Year's Concert 2019

些かならず遅刻しましたが、今年もよろしくお願いします。本来ならば年明け早々に何か書こうと思ってはいたのですが、正月明けからいきなり体調を崩しまして。風邪から気管支炎になり、そのままずるずると一ヶ月引きずって今日まで。いまだオカリナの演奏すらまともにできない有様で、そろそろ登山欠乏症の禁断症状が出そうな今日この頃。そんな鬱々とした年明けの一ヶ月でしたが、そんな私に丁度良いものが届きました。



今年もリアルタイムで楽しませていただきましたが、いやいや毎年ながら素晴らしい演奏でしたね。2017年のニューイヤーほどのインパクトはありませんでしたが、堅実さと新鮮さがほどよくバランスのとれた、実に飽きのこない素晴らしいコンサートでした。どのくらい気に入ったかといいますと、その勢いでティーレマンのベートーベン全集をポチったくらいでして・・・。そちらについては、また次の機会にでも。

さて、そんな素晴らしいニューイヤーコンサートのCD、わくわくしつつ一曲目を再生してまず思うのは、「音が良くなったなぁ」ということです。かつてはSONY + クラシックって最低最悪の取り合わせで、あの頃の音を一言で言うなら「お風呂場クラシック」とでも言いましょうか。DTM作品ばりにメタメタに音を加工してしまうため、演奏が台無しになってしまっていたのですけれど・・・ここ数年のSONYのCDからは、かつての悪癖がほとんど感じられません。

当然音は加工しているのですけれども、その加工がかなりナチュラルな印象になっているのですね。録音の時点で自然な音なんてあり得ない上に、再生環境がさらに音を歪めるわけで、オーディオで自然な音なんてものはあり得ないのですけれど、それでも「自然っぽく」聞かせてくれるこの編集技術には、目を見張るものがあります。

部屋にふわっと広がる軽やかな木管の高音、体を打つような力強い金管の中音、引き締まった打楽器、そしてウィーンフィルならではのつやっつやの弦楽器。一曲目の「シェーンフェルト行進曲」から、その素晴らしい音を堪能させてくれます。本当、嘘みたいにクリアですね。ボリームを目いっぱい上げているのに音がダマにならない。故に、この一曲目のわくわく感がダイレクトに伝わります。

躍動的で鮮烈な若々しさを魅せた2017年、一転してコテコテの保守だった2018年ときて、今年の演奏はその中間という印象。勢いが良すぎてぶっ飛んでしまうようなこともなく、あくまでバランスの良さは維持した上で、やや若々しい印象にまとまっていると言いますか。

一曲目は厚みと迫力をを感じる冒頭からふわっと軽やかなマーチへ。スピードやパワーではなく、ぐっと入った力をふっと抜くタイミングと加減の妙が、曲に心地よい躍動感を与えているように感じます。これはこの指揮者の特徴なのでしょう、いわゆる「お馴染みの曲」でも、アクセントを入れる位置や加減が独特なので、だいぶ印象が違って聞こえるのです。まぁ、これは評価の分かれるところなのでしょうけれど、少なくとも私は好きですね。

曲順と選曲もまた秀逸。これも近年の特徴ですが、ひと頃の指揮者のように似たようなポルカを連打して退屈させるようなことは、決してありません。そしてやはり注目せざるを得ないのは、今年が初の曲たちです。曲としてはそんなに好みではないのですが、4曲めの特急ポルカは良い選択だったと思います。

ポルカとワルツはニューイヤーの花形であり定番ですから外せません。しかし一方で、あまりに定番化しすぎてマンネリ感があるのもまた事実。そんなポルカの枠に、定番と同じ特徴を残しつつ新しさをも同時に感じさせるこの曲を入れてきたのは、上手いなぁと思いました。

個人的なお気に入りは、まずは第二部一曲め、トラック7の喜歌劇「ジプシー男爵」序曲です。毎年、前半後半の一曲めはつかみの一曲ということもあり、印象深い曲になることが多いのですよね。この曲は曲自体が好きであることに加え、今年の起伏に富んだ、それでいて実に滑らかで上品にまとまった演奏に惚れ込みました。フォルテよりピアノにゾクゾクするタイプの演奏ですね、これは。

今年初登場シリーズのひとつ、「エヴァ・ワルツ」もオススメの一曲。騎士物語の歌劇のための曲のようで、冒頭はなんとも勇壮で壮大な印象です。よもやここから憂いを帯びた美しいワルツへと繋がるなど、誰が予想できましょう。新鮮な驚きとともに、艶やかなワルツを楽しむことができます。

もうひとつの初登場曲、「幕間のワルツ」は、これまた独特なキャラクターを持つ作品。私は「目次」または「表紙」という印象を受けました。特にBGMっぽい印象の曲とでも言いましょうか。曲と一緒に何かの解説の動画でも流したら合いそうな気が。なるほど「幕間」というテーマに実によく合致した作品だと思います。

最後に、毎年指揮者の違いがもっとも現れる、結びの二曲について。まずドナウですが、美しさが際立つ演奏だったような気がします。保守的な指揮者がよくやるスロースタートですが、それでいて嫌らしいしつこさは感じさせず、リズムに乗ってからはティーレマンならではのアクセントの妙で軽やかに。テンポを結構大きく揺らすタイプの演奏なのに、こんなにも全体の印象は軽やかでスムーズになるものなのだなと感心させられました。

そして締めのラデツキー、ティーレマンは聴衆を細かく指揮するタイプのようですね。手拍子が入る部分はだいぶ少なめに抑えられていますが、それでいてアクセントとして丁度良い塩梅にうまくコントロールされています。全体的に「お祭り騒ぎ」的な楽しさはありませんが、逆に聴衆との一体感を感じさせる、楽しい演奏でした。

一言でまとめると、つまりクリスティアン・ティーレマンとは、「巧い」指揮者なのだなと。楽しいのに上品という、なかなか見られないバランスのニューイヤーコンサートでした。これは2017年のとはまた違った意味で、何度でも聴けそうなアルバムです。

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