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日々の便り

 

調整と仕上げ

今日も今日とて東京は雨、というかゲリラ豪雨ですね。昨日に引き続き、晴れたかと思うと俄かに掻き曇り、視界が白くなるほどの豪雨がやってくるのの繰り返し。特に用がなければ外出はしたくないお天気です。なにしろ雨の降り方の激しいことと言ったら、地面からの跳ね返りで膝まで濡れるくらいでして。そして残念ながらお盆休みは今日が最終日。結局今年も、雨に祟られて終わってしまうのですね。

とはいえ、今年のお盆は多少なり成果のあるお休みになりました。台風9、10号による悪天候で家に閉じ込められた結果、整理整頓やら掃除やらが捗ること。始終働いているので「休み」の定義に疑問を感じることを除けば、なかなか有意義な時間を過ごせました。なによりはっきり成果と主張できるのは、ベースの修理が完了したことでしょうか。というわけで、今回はそのお話を。

残っていた作業はペグの取り付けと、各種調整のみ。ペグの取り付けについては、防錆油に漬け込んでいた(笑)ペグをメモの通りの順番で戻していくだけですので、特にこれといって問題もなく完了。ついで、調整用に買っていたサウンドハウスさんの安い弦(PLAYTECH)を張りました。

2019-08-15
2019-08-15 posted by (C)circias

プレテクの弦は値段なりの音ではありますけれど、長期保存や整備調整、普段の基礎練習程度の用途であれば充分に使えます。なにしろ普通の弦が¥1500くらいするのに対して¥520ですからね。とても助かってます。なお、ゲージは45-105を使用してみました。で、ここで嬉しい誤算が。なんと、弦を張ってもネックがほとんどたわみません。

なんか凄いですねこのネック。ぶっとくてゴツいのは伊達ではないということでしょうか。こういうの、好きですねぇ。質実剛健、いいじゃないですか。トラスロッド頼りのペラペラネックは好きじゃないので、頑丈なのは嬉しい限りです。それにしても、いちいち私の好みに刺さるのは、プレベだからなのか、この楽器だからなのか。

ネック調整を省略できたので、お次はサドル調整です。サドル調整というと弦高調整のことと勘違いしている人もいるようですが、それではなく。サドルの高さを指板のRに合わせて調整する作業のことです。レスポール系やフロイドローズ系のブリッジでは不要というかできないので、知ってる人が少ないのかもしれません。

サドル調整には、Rゲージという工具を使用します。次の写真の工具がそれ。ギターやベースの代表的な指板のRがテンプレートで揃っていますので、FENDERやGIBSONおよびそのコピー系の楽器であれば、だいたいこれで対応できるはずです。

2019-08-15
2019-08-15 posted by (C)circias

どうしてこんなマニアックな工具があるのかと言いますと、一頃サドルやナットの自作にはまっていたことがありまして・・・まぁ普通は持ってませんよね、こんな工具。でもその場合、以下の手順で専用のRゲージを自作できます。

1)指板のブリッジ側の端と同じ幅の厚紙を3枚以上用意
2)厚紙を木工ボンドではり合わせる
3)ボンドが生のうちに、厚紙を指板のブリッジ端に乗せる
4)幅広のリボン等で厚紙を指板にきつく押し当てて縛る
5)ボンドが乾くまで放置

既製品のRゲージを使う場合は、だいたい見当をつけて見繕ったゲージを指板に当てて、どのRを使うべきなのかを確認しなければなりません。次の写真のようにぴったりとハマればOK。どうやらこのベースは300Rのようですね。

2019-08-15
2019-08-15 posted by (C)circias

Rを確認したらまず4弦の弦高を調整し、そこを基準にサドルを下げていきます。サドルの高さ調整が終わったら、今度はオクターブ調整。音を低くするにはサドルをブリッジ側に、高くするにはネック側に。一通りの調整が終わると、ブリッジの状態は次の写真のようになりました。

2019-08-15
2019-08-15 posted by (C)circias

パーツに残っている傷跡とは全然違う位置と高さになりましたね。弦によってオクターブ調整の結果は異なるのですが、こうまでも変わることはないでしょう。要するに、前オーナーはサドル調整はもちろんオクターブ調整すらせずに、適当に使っていたということになります。

安物の楽器の多くは、このあたりの調整が行われていません。本来は楽器屋さんがやるべきところなのでしょうけれど、それも店主ないし店員次第で、実際には適当に売ってるだけというお店も多いようです。その結果、安物楽器に手を出す初心者ほど、必要な調整が行われていない、弾きづらい楽器で練習することになってしまうわけで。安くて弾きやすい楽器を手に入れるには、専門知識と技術が必要という、この矛盾。皮肉なものですね。

ともあれ、一通りの調整が終わりましたので、最後にブリッジカバーを取り付けます。で、ここで新たに判明した事実がひとつ。本体のネジ穴跡が、なんというか、ブリッジに対して直角平行になっていません。もしかしてこれ、ユーザが任意で取り付けるオプションだったりしたのでしょうか。ならば、ネジ穴の適当な処置も説明がつきますね。

2019-08-15
2019-08-15 posted by (C)circias

そんなわけでカバーの位置も再調整し、最後にノブをつけて完成。ボリュームノブはオリジナルのものが欠品していたので、仕方なく新品を用意しました。まぁプラパーツなのであっても劣化しきっていたでしょうけれど。上の写真は、完成後の状態。屋外で写真を撮るわけにはいかないので、仕方なく床に寝かせて撮りました。ベースは大きいので、背景に困るのですよね。

思った以上に綺麗に仕上がりましたね。本体のくたびれ具合に一部パーツのピカピカ具合がちょっと合ってませんが、これでも一応、ピックガードとノブ以外は全部オリジナルパーツでのレストアなんです。安物の国産パーツにオリジナルであることの価値などないのですが、なんといいますか、そこはレストア趣味の人間にしか理解できないロマンがありましてですね。

確か6月頃から始めたので、中抜けを考慮すると大体二ヶ月の作業。少しずつコツコツと進めていたので、特に苦労したという感じはしませんでしたが、なかなかに時間がかかりました。しかし、のんびり丁寧に進めたお陰で、結果は上々。特に、トーンとボリュームのポットをオーバーホールしたのは、良い経験になったと思います。

「鳴らない」「部品取り用」とされたジャンク品だったので、本体価格は当時¥3000くらいでしたね。なにしろ汚かったし、指板の塗装欠けをはじめ、重症と思しき欠損もありましたし。それがここまで立ち直るのですから、たいしたものではないでしょうか。もっとも、修理に投入した資材や工具を一から揃えたら、普通にFENDER純正品が買えてしまうのはご愛嬌、あるいは気にしたら負け。これはそうロマン、ロマンのお値段なのです。プライスレス。

ところで、肝心の音色の方ですが・・・うーん、生音がやたら活きがいい割に、アンプを通すとなんだか単純な音になりますね(笑

しかしまぁそれも想定内のこと。ARIAのピックアップは、だいたい微妙というか、のっぺりした単純な音になってしまうのはギターの修理で知っていました。エフェクトで固めるには、これはこれで扱いやすいのかもしれませんけれども。とりあえずしばらくはこれで鳴らしてみて、そのうち改造しようかなと思っています。その場合は、コントロールをまるごと新造する方向で。折角直したオリジナルパーツですから、これはこれで残したいですしね。記念品的な意味で。


コントロールの組付け

ふと気がつくと、もう8月も半ばなんですね。毎度言っている気がしますが、時間の経つのの早いことといったら。ちなみに、7月末から今まで何をしていたかと言いますと、休日は専ら山に登ってました。晴れたら山に行く、これはやめられません。山や森に出かけることに比べたら、他の趣味の重さなど羽毛のごとく軽くなるのです。

それはともかく。今日はお盆休みなのですが、台風10号の影響とやらで天気の方はあいにくの雨。思えばここ数年、お盆休みはほとんど雨だった記憶しかないのですが・・・まぁそれはいいでしょう。そんなわけで、久々に腰を据えて室内作業に勤しむことにしました。となれば、ベースの修理の続きをするしかありませんね。半月ほったらかしておいてなんですけれども。

電装系パーツのオーバーホールは7月中に一通り完了していますので、今回実施するのはその組み付けです。とはいっても、いきなりはんだ付けしてはい完成、というわけにはいきません。なぜかと言うと、FENDERのレイアウトと古い国産のコピーモデルとでは、キャビティのレイアウトが微妙に異なっているからです。

そのため、まずはパーツをピックガードに組み付けて、回路は組まずに、パーツがキャビティに収まってくれるかどうかを確認しました。幸い、パーツはギリギリでキャビティに収まってくれるようです。ただ、CTSポットより一回り小さいオリジナルのポットでこの有様ですと、ポット交換をしたらどうなるかちょっと微妙ですね。

2019-08-14
2019-08-14 posted by (C)circias

パーツの位置確認が終わったら、今度は回路のはんだ付けを行うのですが・・・古くてサビがちなオリジナルパーツにうまく半田が乗るかどうか不安です。それに、ピックガードってどれくらい耐熱性があるのか分かりませんよね。さすがに本番パーツで試す気にはなれなかったので、ボール紙でダミーのピックガードを作り、そこにパーツを組み付けてはんだ付けを行うことにしました。

2019-08-14
2019-08-14 posted by (C)circias

そうしてコントロールを組み終わり、さぁ取り付けるぞという段階でひとつ、問題が発覚。どういうわけか、アース線がキャビティからブリッジへ通りません。妙だと思って調べてみたところ、なんとブリッジカバーのネジ穴を塞いだ木栓が、アースの穴を塞いでることが分かったのです。

元オーナーはカバーのネジを紛失した挙句、木ねじではなく長い「ビス」をここにブチこんでごまかしていたのですが・・・おそらくその時、ネジ穴を繋げてしまったのでしょう。次の写真は、ビス穴をドリルでさらい直し、ビス穴とキャビティが繋がっていることを確認しているところです。いい加減なことをするオーナーだとは思っていましたが、さすがにこれほどまでとは。

2019-08-14
2019-08-14 posted by (C)circias

そんなトラブルも乗り越え、ようやく回路の設置まで進めることができたところが次の写真。ピックガードから外した状態でピックアップのラインをはんだ付けしたら、そのままアンプに繋げて、音叉で回路のテストをします。ボリューム、トーンにガリ等の異常がないことを確認できました。

2019-08-14
2019-08-14 posted by (C)circias

回路に問題がないことを確認したら、まずブリッジを取り付けます。ついでコントロールをピックガードに取り付け、仮組みしたところが次の写真。だんだん完成が近づいてきました。

2019-08-14
2019-08-14 posted by (C)circias

なお、写真ではピックガードを止めてしまっていますが、これは手順としては失敗です。本来は、この時点ではピックガードをねじ止めしてはいけません。なぜかと言うと、この後弦を張って、ネック調整をしなければならないからです。

ネックの根元には窪みが切られていて、ネックを取り外さずにトラスロッドにアクセスできるようになってはいるのですが、ピックガードはその窪みを塞いでしまうため、ここでは仮止めに留めるべきでした。

さて、ここまでくればあと少し。残っている作業はペグの取り付け、ネック調整、サドル調整、オクターブ調整のみです。いよいよこの個体も、楽器として復活する時が近づいてきました。
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